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第21話 焼きのり
505号室でホールの本棚にあった漫画単行本を読んでいたら日が暮れてきた……、と思ったら、
「栄さん、食事。はいホール来て」
いきなり暴力サド看護師Aさんにホールにつれてこられたと思ったら指を指されて、
「栄さんの食事はゆりちゃんの前ね」
「みっちゃんがゆりの前!!」
俺は嬉しいけど、ゆりちゃんも嬉しく思ってくれるんだと思うと心が踊る。
夕飯が配膳されて、小学生の給食のような状態で食事が始まったと思ったら、ヘルパーさんが一人モップを持ってゆりちゃんの後ろに立った。
瞬間俺は驚いた。
ゆりちゃんのご飯の食べこぼしを……。
俺は茫然と見ていたら掃除をしているヘルパーさんに『口を動かす』と注意を受けた。
食べるのを忘れるくらいの早さでゆりちゃんは食べこぼす。
……だからかなぁ、ゆりちゃんが間食してても怒らないの。
「みっちゃんも食べるの遅いんだね」
ゆりちゃんの器には焼きのり以外何も残っていない。
そしてその食べこぼしの量は……多分器の半分。
「ゆりちゃん。食べ終わったらごちそうさまして、お薬よ」
「お薬飲んだら『亮』ちゃんに焼きのり渡してきてくれる?」
こんなときにも『亮』なのか。
「……ゆりちゃんは優しいんだね」
その言葉を漏らしたのは、なんと俺だった。
無意識、無自覚でなんでこんなことを口にしたのか分からなかった。
「ゆりと『亮』ちゃんは同じだから」
ゆりちゃんは少し下を向いて言った。
ゆりちゃんと『亮』は同じ……それはどういう意味でゆりちゃんは言ったのだろうか。
暴力サド看護師さん達は頷いて、
「ゆりちゃんが嫌いな薬を我慢して飲むんだから、杉原さんに渡すからね」
するとゆりちゃんは、眉間にシワを寄せて粉薬と錠剤を必死に口に入れてもらって飲んでいた。
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