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第25話 角さんは

ナースセンターで待っていた俺は、暴力サド看護師Aさんに中に連れ込まれた。 また凄いお仕置きが始まると思って、内心はビクビクしていた。 しかし、そこにいた看護師さん達はみんなが真面目な顔をしていた。 「お願い、栄さん……あまりゆりちゃんを刺激しないでくれる?」 「は?」 あまりの変わりように俺はビックリしていると、看護師Aさんはゆりちゃんの家の事情を説明してくれた。 「……ゆりちゃんのご両親は少し長い海外出張をしているんだよ。外国にいるの」 「つまり、ゆりちゃんは今会いたくても両親に会いたくてもあえない……」 「ゆりちゃんはその事を知らない。角ちゃんにも自慢するなってあれほど言ったのに、よっぽど嬉しいんだねぇ」 でも待てよ? 確か山本さんは、ゆりちゃんと角さんは一生外に出られないと話していたはずだ。 「看護師さん、角さんはなんで『』」 すると看護師さん達は顔を見合わせて、こう言った。 「角さんは『調』」 要するに角さんは……あまりということだろう。 実は俺は医者を目指していたから、あの顔色にギョロ付いたように見える細過ぎる身体は気になっていた。 飯も常食じゃなくてお粥。 きっと若い頃みんなからちやほやされてお菓子をもらいまくり、肝臓病になったんだろう。 俺は看護師さん達に口止めされて505号室に戻った。 すると角さんの姿はそこにはもうなかった。 多分外出に行ったのだろう。 ゆりちゃんは永田さんとホールから借りてきたらしい動物の図鑑を見ていた。

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