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第27話 ホールにいた『亮』

パンダの赤ちゃんの公募に外れてがっかりしていたゆりちゃんを、なんとか元気付けようとていた丁度そのときに、両手を拘束されていた保護室の『亮』が暴力サド看護師さん達に連れ出されてホールでテレビを見ていた。 今は4月中旬、何故か『亮』は静かに泣いていた 。 『亮』は『笹倉 叶』が好きで、何かがあって精神病院に隔離されたのは、なんとなく分かってた。 『笹倉 叶』は母校男子校の『潤い』で『ミスコン』の最優秀者で、恋愛感情を持っていたヤツも多かった。 だからゆりちゃんを、『百合ヶ丘 かなえ』を『笹倉』と呼んでいるんだ。 でも、今『亮』が泣いている理由が俺には分からない。 「……何か用?」 まるで兄貴『杉原 俊』の分身のような口調で『亮』は、突っ立ったままの俺に話しかけてきた。 ……『なんでそんな無表情で泣いてるんだよ』なんて俺は聞けなくて、困った。 取り敢えずポケットに折って入れてたティッシュをあるだけ渡した。 「エリートでも精神病棟に入院するんだぁ」 「杉原さん」 暴力サド看護師Aさんは注意してくれたけど、俺はあんまり気にならなかった。 「……親が俺に内緒で大学入試、を替え玉してたんだ」 「エリートなのに情けないねぇ」 「杉原さん!!」 「そうだよ。俺は緊張すると腹が痛くなる。……良かれと思ってしたことなんだけど、俺は絶望して……バイク事故で自殺未遂した」 本当はもっと理由があるけど、カッコ悪くなるから言わなかった(調子がいい俺)。 「栄さん。あんたの入院した理由は言わなくて良いんだ」 まさか暴力サド看護師Aさんがそんな横やりを入れるとは思わなかったからビックリしたけど俺は無視した。 俺が入院した理由を打ち明けたからか、『亮』は俺に話始めた。

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