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第33話 壁のチラシ
ナースセンターの横の壁にチラシが貼ってあった。
『5月5日こどもの日、合同レクレーション開催』
「みっちゃん、ゆり読めないから読んで?」
俺を上目遣いで見てくるゆりちゃんは可愛い、読まないでゆりちゃんを見ていたいけど……彼の頼みだから。
「こどもの日に合同レクレーションがあるんだって」
「こどもの日!!特別にケーキが出るんだった」
こどもの日なのに何故ケーキなんだ?
「ゆりちゃん、そこは柏餅じゃないの?」
「お餅は喉に詰まるから出ないもん」
なるほど、確かにここは年配の人や弱っている人が多いから『餅』類いは出ないんだろう。
「『4階大ホールで男女混合合同レクレーション、映画上映会とビンゴ大会……』」
「ゆりはレクレーションに出られないから、ケーキだけ」
ゆりちゃんは『レクレーション、出てみたいなぁ』と憧れているかのように言った。
なんで『ゆりちゃんはレクレーションに出れない』のか気になった。
「栄さんは強制参加させるから」
また暴力サド看護師Aさんが俺に命令してきた。
……ぶっちゃけると、ゆりちゃんの居ないレクレーションなんかに参加したくなかった。
「俺は隔離病棟で思い出作りは、ここの階だけで足りてます」
「婦長からの命令は絶対!!」
「なんですかそれ?!」
俺の質問にゆりちゃんが答えてくれた。
「この間みっちゃんが昼寝してるときに婦長さんが会いに来たんだけど、気持ち良さそうに寝てるからって、話さないで帰っちゃったんだよ」
……婦長さんがなんで俺に会いに来たんだ?
「婦長さん、優しいね」
「そうだねぇ、ゆりちゃん。栄さんは強制参加、いいね?」
そう念を押して、暴力サド看護師Aさんは仕事に戻って行った。
なんで俺が『ゆりちゃんの居ないレクレーション』に参加しなきゃなんないのか納得出来なかった。
やっぱり好きな子が居ないと盛り上がらないよ……。
「ゆりにレクレーションのこといっぱい話してね、みっちゃん」
そう笑う彼は少し寂しそうに見えた。
……ゆりちゃんはなんで『合同レクレーション』に参加出来ないんだろう。
本人はあんなに参加したがってるのに可哀想じゃんか……。
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