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第35話 俺は問診が嫌いだ

俺は週に一度の問診(カウンセリングを兼ねたような診察)が嫌いだった。 先生は見透かすように気持ちを当ててくるから……、何もかも知られそうで怖かった。 「栄さん、合同レクレーションどうだった?持てたんじゃない」 「……先生それわざとですよね?」 「『5階の新入りが合同レクレーションに参加する、かなりのイケメン』って言ったのは婦長さんだからね」 この笛吹き先生の言うことは信用するのが怖い!! 「最近はどう?調子とか。将来のこととかでもいいし、この病院はどうかな?部屋の人とは上手くやってるみたいだけど」 「……なんでこの病院は何でも入院患者にやらせるんですか?」 そう、この病院には清掃員さんはトイレしか掃除をしない。 ナースコールもない。 閉鎖病棟だからって、かなり窮屈だった。 「そうかもね、特に栄さんの病室は大変かもしれない。深夜に動ける患者さんが君しか居ないから、看護師さんやヘルパーさんを呼んでくるのは栄さんだけしか出来ない」 先生は淡々と話を続けた。 「君は未成年だし、まだ親御さんに守ってもらえる。でもここではいろんな弱い人達が支えあって生きているから、君には少しでも強くなってこの病院を退院してもらいたいんだ」 「そんな勝手なこと言わないでくれ!!……俺はここまで頑張って勉強して有名名門な高校を卒業して、大学に行くはずだったのに、親が勝手に替え玉受験とか。冗談じゃない!!」 「栄さんのご両親も悪いよね。君にはプレッシャーを与えてきたんだから。でも……それは息子『栄 三成』、君にプレッシャーを与えすぎたから、挫折しないようにとの『親心』でもあったんだ。……三成くんもそろそろ親御さんに感謝しなきゃ駄目だよ?」 こうして今週の俺の問診は終わった。 今更父さんや母さんを『』するなんて……出来るんだろうか。 母さんは毎日のように遠い距離を車で洗濯物や差し入れを持ってきてくれてるのは有難いとは思うけど、原因を作ったのはそっちじゃないか。 「みっちゃん、問診終わった?おやつの時間そろそろだから、ゆりも一緒に食べる」 「……うん、そうだね」 「みっちゃん、元気ない。先生に虐められた?」 いかんいかん、好きな人の前で不安そうな顔をしたら俺の株が下がる。 俺は何もなかったように、苦笑いでこう言った。 「ゆりちゃんは俺を心配してくれるの?」 「するよ。ゆりみっちゃん好きだもん」 報われない恋を俺はこの隔離病棟でしている。 それだけがここにいるこれの唯一の救いのような気がした。

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