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第36話 幹さん
『新しい患者さんが個室に入る』らしい。
噂を聞いて、俺はようやく新人と言われなくなる、半ば少し嬉しかった。
「あれー、幹さんだぁ」
「△×病院に転院して3ヶ月しかたってないのに、どうした?」
車椅子の『幹さん』と呼ばれたおじさんは笑って、
「△×病院の患者さんと喧嘩してさぁ、戻って来ちゃった」
「また仲良くしてね」
「仲良くしてして」
随分とまぁ愛想のいいおじさんだ。
それに結構カッコイイかもしれない。
「ゆりちゃん元気?」
「ゆりは幹さん嫌いだもんっ」
あのゆりちゃんが嫌っている幹さんは一体どんな人なんだ?
でもゆりちゃんが嫌いなら、俺もあんまり関わりたくはないかな。
幹さんと仲良くして、俺までゆりちゃんに嫌われたら、俺は生きてく自信がない。
俺はゆりちゃんの後を追って去ろうとした。
「そういえば新人さんが若くてイケメンだって聞いたけど、何処に居るの?」
……早速俺の話題か。
「栄くん、この子」
山本さんに腕を引かれて、俺は前に出た。
「どっ……どうも」
俺はとりあえず笑顔で幹さんに挨拶(?)をした。
すると少しだけ間を空けてから、幹さんはニッコリ優しそうな笑顔で手を差し出した。
「幹だよ、仲良くしてね」
……握手を求められてるんだよな、俺はその手を掴もうとした瞬間尻を触られた。
俺は固まった。
え……?
「顔は僕の好みのタイプだけど、お尻も最高だね」
「……何ですかっ!!尻触らないでくださいっ」
すると回りから大爆笑が起きた。
……なんなんだよ、一体?!
「幹さん、あんたまたゆりちゃんのお尻触ったのかい?!」
後ろから暴力サド看護師Aさんが来てくれて、俺はようやく助かったと思った。
「ゆりちゃんよりもド・ストライクな栄くんに乗り換えました」
「ゆりちゃんじゃなきゃどんどんやりな。特に栄さんは若いから落ちるかもね」
なんだか分からない会話で俺は置いてかれていたら……山本さんが一言。
「幹さん、ゲイなんだよ」
………ゲイ。
所謂ひとつの……『ホモセクシャル』
この日から俺は幹さんにセクハラを受ける運命になった。
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