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第40話 俺の告白
俺は幹さんの個室から飛び出してナースセンター前を通ったとき、ゆりちゃんの声が聞こえて立ち止まった。
ナースセンターのガラスの壁からゆりちゃんと看護師さんが見えて、何やら叫んでた。
「ゆりはみっちゃんが好きなんだもんっ!!なにしてもゆりの勝手だもんっ」
「だからってキスしたら駄目だって、看護婦さん言ったよね?」
「だってベッドに入るならすることなんだって、幹さんが言った」
「幹さんの言うことは真に受けないの」
「……ゆりのみっちゃん、幹さんに……っとられちゃう」
何かとんでもなく嬉しいことをゆりちゃんは叫んでくれてるけど、少し尋常じゃない気がした。
本当にどうしたんだろう。
「ゆりちゃん、病院は病の患者さんがいるんだよ。ゆりちゃんも悪いところを治すためにいるんだ、治ったら退院するんだから、感情移入したら駄目だって看護婦さんは教えたよ」
「ゆりは退院出来ないもん」
「でも栄さんは違うの。治ったら退院するんだよ?……栄さんが退院したら、残ったゆりちゃんはどうするの?」
そうか。
俺は退院するけど、ゆりちゃん一生をこの隔離病棟で過ごすんだ。
週に一度会えるのは家族だけ、でもゆりちゃんの家族は海外に出張中。
誰にでも優しいゆりちゃんは寂しい。
俺はそのゆりちゃんの寂しさに入ってしまったんだ。
「みっちゃんも退院しなきゃいいんだよ」
ゆりちゃん……。
「ゆりちゃん、振り出しに戻っちゃうよ?……そしたら保護室になる」
それどういう意味だ……?
その前に俺は叫んでいた。
「俺は退院しないっ。ゆりちゃんちゃんと一生をこの病院で過ごす!!」
「みっちゃん!!」
「栄さんっ!!……あんた、いつからそこにいたんだ」
ゆりちゃんと看護師さん達は俺の叫びに驚いていた。
そしてその叫びは、ホールまで届いていたらしく、俺のゆりちゃんへの想いは、今をもって知れ渡ってしまった。
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