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第42話 『百合ヶ丘 かなえ』の過去

もう……点滴が効いてきたのか俺の意識はは虚ろだった。 その中で亮の声だけがナレーションのように聞こえてきた。 ゆりは生まれつきの重度の発達障害、それでも身体的には何ら問題はなかったから気付くのは小学生に入る直前だったらしい。 大切に育てられたゆりは、やっと言葉を覚えて保育園に入ることが出来た。 ……ちょうどそのときにゆりに妹が出来た。 生まれるまでは、ゆりも楽しみにしていたらしい。 けど、ゆりに100%注がれていた『愛情』が半分になった。 嫉妬したゆりは、その妹の首を絞めた。 妹がいなくなれば『愛情』は自分に戻ってくると信じて、ゆりは行動をした。 幸い発見が早かった妹は命は助かったものの植物状態。 ゆりは発達障害と分かりこの病院にいることになって、親は妹の治療のために渡米。 ゆりは一年に一度しか親には会えない。 ゆりを好きになったらいけないんだ。 ゆりに好かれたらいけないんだ。 そこで俺の意識は飛んだ。

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