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第43話 重怠い中で
俺が次に気が付いたとき、妙に重怠かった。
亮から聞いたゆりちゃんの過去は本当か夢か分からなくて、確認しようと亮のほうの部屋を見たら、彼も俺と同じ点滴をされた後らしく空の容器が下がっていた。
だから確証した、あれは夢じゃない。
ここには監視カメラと盗聴きが仕掛けてある、亮は喋ったからこの点滴を受けているんだ。
俺はこの病院にいても大丈夫なんだろうか。
「……看護師さん、ゆりちゃんのことは……本当ですか?」
俺は出来るだけ大きな声で言ってみた。
返事は帰ってこない。
多分看護師さん側からのマイクはついていないのだろう。
重怠い中俺は、それでもゆりちゃんが好きなことには変わらない気持ちだけは感じていた。
チョコレートを一欠片口に入れてくれた優しい子。
亮を思ってご飯の焼きのりを渡してくれと頼んだ子。
パンダの赤ちゃんの名前を付けたくて、必死にハガキを書いた子。
俺のペニスにシャワーをかけようとした無邪気な子。
俺を好きだと、幹さんにとられたくないと叫んでくれた子。
どのゆりちゃんも俺は大好きで仕方がない。
たとえゆりちゃんの『俺を好きな感情が友情でも』俺は構わない、俺がゆりちゃんを勝手に好きになったんだから。
少したって暴力サド看護師Aさんが、飯を持って看護室へ入ってきた。
「栄さん、あんたあの状況でよく杉原さんの話聞けてたね。……ゆりちゃんと杉原さんの境遇が似てるから先生が二人に打ち明けたのに、ゆりちゃんは杉原さんじゃなくて栄さんを好きになるなんてさ」
『どうなるかは薬じゃ変わらないんだねぇ』、そう言って俺みたいな大男を支えて起こし、飯を渡してくれた。
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