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第44話 強制転院?強制退院?
保護室の中での笛吹き先生の問診は一言。
「栄くん、君は転院だ」
とても寂しい気分の結果のなのに、妙に清々しかった。
多分これがあの強い点滴安定剤の作用だろうなと思った。
「っふざけんなよっ!!三成が、……ゆりが、なにしたっていうんだよ……」
俺の代わりに怒ってくれたのは、亮だった。
亮はまだ重怠いはずなのに、そんな気力があるなんて凄いなぁと俺は感心した。
自分は狂っていると言いつつも、自分以外の相手のことでここまで熱くなってくれるなんて思ってもみなかった。
「ただ……好きになっただけじゃねぇかっ!!それの何処が悪い」
「ゆりちゃんと杉原くんが支え合ってくれるぶんには問題はなかったんだよ。……境遇が似ていたからね」
先生はニコリと苦笑いで、
「ゆりちゃんのためでもあるし、恋愛はこの病院では一応禁止はされているんだよ」
「ゆりちゃんはなんて言ってますか?」
「栄くんは取り乱したけど、そろそろ退院するって言ってある」
それでゆりちゃんが納得しているなら……仕方がなかった。
「転院しても最初の入院は3ヶ月とだいたい決まってるから、あと1ヶ月で退院だったんだ」
「転院したくないって言ったらどうなりますか?」
「栄くんの場合なら……退院でもいいかな。こんなに軽い病状で何故入院したのか不思議でもあったから」
どうあっても俺をこの病院から追い出すということは決まっているようだった。
もうこうなったら開き直るしかない。
「俺は『いつ追い出される』んですか」
追い出されるなら、ゆりちゃんに俺が彼をどれだけ好きか知ってもらおうと思った。
残念なイケメンなら、『最後まで残念なイケメンでいよう』、俺はそう思ったんだ。
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