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第46話 放れる準備
「ゆりちゃん、これあげる」
「なあに、みっちゃん」
俺は505号室に戻ってきてから、小学一年生文字ドリルの参考書に付いていた五十音表を渡した。
「退院したら毎週月曜日に、ゆりちゃんに手紙を出すから読んでね。平仮名で書くけど、もし分からないところがあったら山本さんにでも読んでもらってね」
「月曜日に出してくれるの?」
「木曜日に手紙を看護師さんから渡されなかったら、催促してね。俺は絶対に出すから」
俺はそう言いながら、ゆりちゃんのベッドの壁際に平仮名五十音表を貼った。
「みっちゃんはゆりにお手紙を書いてくれるなら、ゆりもみっちゃんにお手紙書きたい!!」
そう言われて嬉しくなって、俺は一番短縮されても届く郵便番号と住所、名前を平仮名で書いたメモをゆりちゃんに渡した。
念のため、家電とスマホの電話番号も書いてみた。
「みっちゃんがゆりにお手紙に何を書いてくれるのか、楽しみにしてるからねっ」
「俺もゆりちゃんが手紙に何を書くのかが楽しみだな。お互いのこと沢山知ろうね」
「うんっ」
ゆりちゃんは五十音表を眺めて、『みっちゃんの『み』はこれ』と嬉しそうに……楽しそうに指をさしていた。
俺はこの手紙に俺にとってゆりちゃんがどれだけ大切か、あとはこの病院の外等のことを丁寧に書こうと思った。
彼がここから出られないのであれば、俺が教えてあげればいいんだ。
……手紙に写真を付けたら、喜んでくれるかな?
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