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第47話 『悲劇の絵本』
「ゆりちゃん、ホールに行こう」
俺の提案にゆりちゃんは、
「今テレビ見ていい時間じゃないし、あと少しで夜ご飯だよ?」
病院の晩飯は早い、でも少しでも俺はゆりちゃんと一緒の時間を作らなきゃいけなかった。
この病院で一生を過ごすゆりちゃんにとって、俺はほんのわずかな時間を過ごしただけで、俺はゆりちゃんがこれからも好きだけど、純粋すぎるゆりちゃんにとって『俺』の存在は『友情』かもしれない。
その場合は時がたてば忘れられる可能性がある。
「でも絵本一冊は読めるよ」
「っ!!みっちゃん読んでくれるの?」
「読む読む」
「読んで!!」
ゆりちゃんの表情がとても明るい笑顔になった。
ゆりちゃんと俺は一緒にホールに行こうとすると、ゆりちゃんの手が俺の手をぎゅっと握ってきた。
「っゆりちゃん……」
「みっちゃんっ、早く早く」
ゆりちゃんのこれは『友情』か、それとも『愛情』なのか、純粋すぎて分からない行動だった。
でも、それでも俺は嬉しくて心が弾んだし、元カノの希恋(Fカップ)に抱き締められたときよりも心臓がドキドキ高鳴った。
ゆりちゃんは俺に読んで欲しい絵本を選んできた。
『ロミオとジュリエット』と『人魚姫』。
どちらも悲劇で終わる絵本だった。
俺はなんとなく感情移入しちゃって、二冊を音読し終わった。
……顔を上げてゆりちゃんを見ると、何時ものように笑ってなくて、嗚咽して泣いていた。
「ゆりちゃん……何で泣いてるの?」
俺の疑問に、ゆりちゃんはこう答えた。
「だってっ……ぅぐっ、みっちゃんがっ……泣ぃでるんだもんっ!!」
そう言われて気が付いた、俺も泣いていた。
回りには他の患者さんやヘルパーさん、そして暴力サド看護師さん達が俺達を見ていた。
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