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第54話 自分勝手なママの子みっちゃん
「みっちゃん、あまり根を詰めたら駄目よ」
夕方勉強をしていたら母さんが麦茶を持って来てくれた。
「母さん、ありがとう。でも時間が惜しいんだ」
こんなに勉強して知識を頭に入れても、実践が出来ないから入れ損なのは分かってる。
でもどうしても早くと先走る。
「……ママはみっちゃんをよく見てなかったのね。昔から頑張り屋なのは知ってて、自力で有名な名門高校にも進学していた。なのに心配して替え玉なんて勝手なこと……。本当に反省しなくちゃね」
「母さん」
「何、みっちゃん」
「俺はこれから父さんや母さんに反対されるような人生を歩いていこうと思ってるんだ」
多分、いや絶対に反対される。
だって俺は『男の子』を好きになってて、諦めきれないんだ。
「それはしょうがないわ。……『自分勝手なママの子みっちゃん』だもの、もうみっちゃんの人生を口を出すことなんてママには出来ない」
「……母さん」
「あの病院から連絡があったの。『息子さんのお手紙 は、本人には渡せません。まともな内容のお手紙を送るように伝えてください』って」
「……は?!」
「どうやらみっちゃんは『男性』にラブレターを書いていたのね」
あの暴力サド看護師、中身確認してるなっっ?!
俺は少し焦りぎみで母さんを見たけど、母さんは笑っていた。
「その子がみっちゃんとママを変えてくれたのね。ママは感謝しなきゃ」
そう言うと母さんはミミズが這ったような文字のハガキを渡してきた。
ゆりちゃんからだった。
みっちゃん しゃしん ありがとう
おてがみ ください
さみしい
ゆり
ゆりちゃんからの初ハガキだった。
あのゆりちゃんが、一生懸命に書いてくれたハガキを見たら……俺の目から涙が込み上げてきた。
「みっちゃん、その子はどんな子なの?」
「っ……純粋で、かわぃくて……っチョコレートが好きな『優しい子』」
ゆりちゃん、俺ももう寂しいよ。
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