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第56話 待ち伏せ
「あれ……」
「栄先輩だよな」
「……あぁ、例の替え玉受験した……」
校門の前で立って杉原を待ち伏せしてたら、案の定俺はこの学校じゃ有名になっていた。
みっともない。
恥ずかしい。
これじゃ俺は晒し者だった。
だけど引き下がるなんて、俺にはどうしても出来ない。
俺は杉原を見逃さないように、顔をしっかり上げて探した。
すると昇降口から金髪で小柄な生徒が見えた。
……亮を狂わせた『笹倉 叶』だ。
あんな遠くからでも外国の血が入ってると目立つ。
その隣に俺より少し背が高い杉原の姿を見付けて、俺は校門のド真ん中に立って待った。
「杉原!!」
「……えっ?栄?!お前退院出来たの?ちょー凄くない?」
杉原は俺の姿を見て、驚いていた。
驚くなら、まず替え玉受験したのに、嫌々ここの制服を着て待ち伏せしていたことに驚いていた欲しかった。
「杉原先輩のクラスメイトの先輩ですか?」
可愛い『笹倉 叶』の声。
この男子校の『潤い』と呼ばれている生徒……、俺が三年生のときの『ミスコン』で圧勝しただけのことはある。
「そうだよ。元クラスメイトだけど」
「杉原、頼む!!……俺に精神科のこと教えてくれないか」
俺は杉原に頭を下げて頼んだ。
「栄、……叶の前で言ってほしくないんだけど」
「あ」
そうだ、亮は『笹倉 叶を殺そうとして精神科に入院した』んだ。
あまりというか、かなりキズを抉ることを俺は言ってしまったかな……そう思ったけど、『笹倉 叶』は平気そうな表情をしていた。
「私も少し知りたいと思っていました。亮がどのような所にいるのとか」
「叶」
「杉原先輩は秘密主義なので、何も教えてくれないんです。私も同席しても良いですよね?」
『笹倉 叶』は俺が思っていたより、結構しっかりした性格なんだなと思った。
だから俺も逆に『杉原兄弟を夢中にさせている彼』が気になったから、俺が切り出した。
「俺は入院している亮を知ってる。……亮のこと知りたいんじゃないかな?」
「教えて下さい、先輩っ」
まさかこんなことで本当に吊れるとは思わなかったけど、こっちからしたら不幸中の幸いだ。
「栄は凄いじゃん。……俺を強制させる技を持ってるなんてさ」
杉原は凄い綺麗なイケメン苦笑いで『笹倉 叶』を見てから、俺を見た。
「……そこの公園に場所変えていい?」
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