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第57話 公園に三人
俺は杉原と『笹倉 叶』に案内されて、学校近くの公園の木陰のベンチに来た。
話をふるのは俺だから、一応適当に自動販売機から冷たい飲み物を買って二人に渡した。
「で、なに?……精神科の何が知りたいわけ」
「何も情報が入らない!!外からも、中からも……。どうしたら良いのか分からないんだ」
俺は情けないことに杉原に縋るような形を録ってしまった。
「どして今、栄が隔離病棟内を気にするのか俺には分からないんだけど?折角退院できたなら関わりたくないのがフツーなんじゃない?」
それは……杉原の言うとおりかもしれない。
「入院しているときは、外部のことは全く情報は入ってこなかった。唯一の情報源はホールにある一台のテレビと週に30分の面会だけだ。……一生を隔離病棟で入院する人間にしてみたら、それでもいいのかもしれないけど、俺は中の人と連絡が取りたいんだ」
「どして?」
「……好きな子が入院してるんだ。その子と連絡がとりたい」
俺は包み隠さずに話すことにした。
「俺が……替え玉受験して、彼女にもフラれて……病院で拘束されてるときに、知り合った可愛い年上の子。パンダとチョコレートが好きなんだ」
ゆりちゃん……退院してからまだ一年と経ってないけど、とても懐かしさを感じる。
「栄は男子病棟だったよな。じゃあ『男』?」
「そうだ。俺はあんなに巨乳の女の子が好きだったのに、今じゃあの可愛い彼が一番『好き』なんだ」
忘れられっこない。
あんなに酷い病棟の状況で、駄目だと言われたのに俺の病室に、心の中にすんなり入って来たんだ。
ゆりちゃんの『大好き』なチョコレートのように、甘く溶けて隙間から入ってきた。
「『好き』なんだよっ!!……どうしたって忘れようがないんだ」
「……」
「杉原、頼む!」
俺はその場に土下座して頼んだ。
「あわわっ……!!えっと、先輩?土下座なんてしなくても杉原先輩は教えてくれます」
「俺は叶以外には甘くないよ」
『笹倉 叶』は土下座した俺の横にしゃがみこんで、俺を立たせようとしてくれている。
でも俺の知ってる杉原は『甘くない』ことを知っている。
「いいです、杉原先輩には頼みません。先輩、今から杉原先輩のご自宅に行きお義母さまに聞いてみましょう」
は?!
「え?ちょっと叶ぇ?!」
「杉原先輩がこんなに薄情な人だとは知りませんでした」
……『笹倉 叶』ってこんなキャラだったのっ?!
「分かった、分かったから叶!!」
「そうです、最初からそうしてくれてれば良かったんです」
俺の知ってる杉原も『笹倉 叶』も、噂のような『あやしい雰囲気』じゃなかった。
杉原も『好き』な子に振り回されて、『笹倉 叶』も普通に考える、まんまただの『一人の人間』だった。
「栄、俺は最低限の亮を聞かされてるから。叶に『変な亮』を聞かせられても困るんだよ」
「……亮は『笹倉を盗った兄貴が憎い、でも尊敬してる』って。……感情のコントロールができてないんだ」
「……」
「亮が?」
確かに亮は話してくれた。
亮は暴れてるだけじゃない、感情のやり場がないんだ。
「杉原の誕生日の日に話してくれた。俺は亮が何故隔離されてるかを知ってるから」
「いいよ、連絡の取り方教えてやる。叶を送ってから」
『何故同席させてくれないんですか』と怒る『笹倉 叶』を杉原と俺で送ってから、杉原の家に訪れた。
杉原の家も俺の家も人並みの家より遥かにデカいほうなのに、『笹倉 叶』の家は流石に『大豪邸』だった。
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