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第58話 遮断と興味
俺は杉原の自宅で、精神病棟であったことをおおまかに話した。
杉原は亮のことが聞ければ気がすむのかと思ったが、結構患者の身の回りの出来事も聞いてきたから話したのだ。
勿論ゆりちゃんのことも話した。
……ゆりちゃんの犯した罪のことも話したら、俺は涙が込み上げてきて、ティッシュを箱ごと渡してくれた。
そして俺が病棟内で恋愛していたことも話したら、一言『苦労したな』と苦笑いを浮かべてくれた。
「栄、あの病院は特殊で外部の出来事を遮断してるんだ」
「なんでそんなことするんだよ?テレビも一台しかないからか……」
「違う。あの病院で一生を過ごす重病な精神患者には必要のない情報だから。外に出たいなんて興味を持たれたら脱走の恐れがあるからだ」
そんなこと出来っこないのに。
「杉原は知らないのか?ナースステーションの中に唯一の出入り口があるだけで、他にはないんだ」
すると杉原は笑ってこう言った。
「もうひとつ出る方法があるだろう。あそこは精神科だ、他に科はない」
俺はそれから思い切り考えた。
そしてひとつの答えが出てきた。
精神科しかないのだ。
他に病気や怪我がでないようにしている、内科やその他の内容の病気が出た場合は他の病院に連れていかなければならないのだ。
だからあの病院は出入り口は一つで、外に出たいという興味を無くさせるために外部からの遮断を行っているのだ。
「で、栄はどうするんだ?」
杉原はどうやら俺の恋愛に興味が出てきたらしい。
「……来年にはあの病院に入るよ」
俺は考えていることを杉原に包み隠さず話した。
唯一何の問題もなくあの病院に入れる手段を俺は考え付いていたんだ。
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