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(11) 蒲団
ぎゅうっと時政様にしがみついた。
重力を失って……
体が浮いたから。
俺の体は、時政様の腕 に抱かれている。
キャアァァァー!
(これって、お姫様抱っこだーっ)
「暴れるな」
「だって!」
お姫様抱っこだよ、お姫様抱っこ!
平静を装える訳ない。
人生最大の有事だ!
焦る俺を逃がすまいと、逞しい腕が抱きしめる。
ますますぎゅっとされてしまい、体と体、頬と胸が密着する。
キャアァァァーッ!
体が熱い。
耳も、顔も、全部。
「片付けやら怪我人の治療やらで、騒々しくなる。場所を移すぞ」
時政様だって、怪我人でしょう。
……と思ったのだけど。
当人は手当てする気は全くないらしい。
駆けつけた使用人たちの目をはばかりもせず。
人の波に逆らって歩く。
俺を大事に腕の中に入れたまま、足で襖 を開けた。
そこは………
お布団一つ
枕が二つ
(こここーっ)
これってー
言うな!
なにも言わないでくれ。
俺だって子供じゃない。
この状況の意味するコトくらい、ちゃんと分かる。
…………………………分かるから。
どうしたらいいか分からない………
「嫌なら逃げ出せ。追いはしない」
布団の上に置かれた俺は、伏せた目を上げると視線をさ迷わせた。
熱っぽい時政様の眼差しに、鼓動が跳ねる。
………イヤ、じゃない。
でも。
ここから先、どうすればいいのか分からない。
「……ァ」
小さく悲鳴を上げてしまった。
頬を撫でた手が、首筋に降りたから。
「今から、そういうコトをするのだが。返事がないのは合意ととるぞ」
吐息が震えてしまう。
艶めいた低い声に……
心臓がバクバクする。
破裂しそうだ。
声が出せなくて。
俺は首筋に置かれた時政様の手に、すぅっと掌を重ねた。
そうして……
もう片方の手で、着物の袷 を下まではだけて、腕を滑らせる。
脱ぎ捨てようとした時。
大きな手が、そっと制した。
「こういう事は、私がするものだ……いや、させてくれないか」
するりと、肩から上衣を滑らせて取り去る。
俺の体を暴いていく。
「……アっ」
「寒いか?」
心配げに揺れた瞳に、頭 を振る。
「あの……俺、どこを見ていれば?」
こういうコト、慣れてないから分からないんだ。
あぁ……と喉を鳴らして、クスリと時政様が笑った。
「私を見ていろ。お前の体に欲情する私を、しっかりとな?」
今度は俺の瞳が揺れてしまう。
(そんなのっ)
恥ずかしい。
だけど………
真摯に優しく、俺の体を暴いていく時政様から目を離せない。
時政様の髪が一筋、首に落ちた。
クチュ
耳朶を食 まれる。
「惚れさせてやる。私にも、私の体にも……」
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