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樹木が色づき、気付けば季節は秋になろうとしていた。長袖の上着を羽織らないと、肌寒い季節へと変わっていた。きっと、チームの大会も大体大きいものは終わっているだろう。チームに顔を出すこともなく、壱や渋基とも、極力話す事を避けてきた今の俺には、チームの情報なんて耳に届くはずもなかった。
「ごめんね、美郷ちゃん。俺、どうしても無理なんだ」
あれから、美郷ちゃんとは何度か連絡を交わしていた。また、何処かに行こうという誘いの連絡も来ることはあったが、どうしてもそれを受ける事が出来ずに、ずるずると時間だけが過ぎて行った。
「好きな人が居るの?」
「それもあるけど、……付き合えない」
俺はいつまでも曖昧にしているのは申し訳なくなり、放課後、美郷ちゃんを呼び出して話をすることに決めた。お互いの高校の近くの公園に呼び出し、その公園のベンチに座り、美郷ちゃんに頭を下げ言い告げる。
「……ちゃんと言ってくれてありがとう」
「いや、もっと早くに言うべきだった」
美郷ちゃんはそれでも笑顔を絶やす事は忘れない。本当に優しくていい子なのに……。俺じゃ……、ダメだよって、判ってもらいたい。美郷ちゃんが見て来ていた頃の、サッカーチームで活躍していた頃の俺とは違うんだから。
「んーん、話出来るような仲になれただけでも嬉しかったから」
「本当……ごめん」
「ありがとう」
もう一度謝罪の言葉を述べると、美郷ちゃんは首を左右に振り、ありがとうと言った。美郷ちゃんはベンチから立ち上がると、俺に向かって深く頭を下げ、公園から立ち去った。俺は、一人残り公園の木々に目線を向け、風で揺れる葉を眺めていた。
季節は秋、俺にはもう……時間がない。その時間はどのくらいで、残っているのはどのくらいなのか、判らないが、短い時間を過ぎて行くのを待つしか出来なかった。勇気の出ない愚かな自分。
―31―
公園で暫く時間を潰していると、いつの間にか時間は流れ、薄暗い夕刻を迎えていた。公園から出て、電車に乗り、駅から自宅までの帰り道。途中にある歩道橋の上で立ち止まり、俺は下の道路を行き交う車の流れを眺めていた。辺りが暗くなってくると、車はライトを付け始める。テールランプの光が遠くまで続いていた。
「なにやってんの? 零?」
車の光ってこんなじっくりと見た事はなかったが、ずっと見てると飽きないものでその場で見ていたら、聞き覚えのある声が耳に届いた。
「……壱夜、あ、今日練習日か……」
「うん」
声を掛けてきたのは壱だった。帰り道の途中だから、隣の家の壱がこの歩道橋を通るのは、当たり前だったことに今更ながら気付く。壱は俺の言葉に頷くと、俺の隣に来ては、車の流れを一緒に眺め始めた。
「なに考えてたんだ?」
「んー、車のライトって意外と綺麗なんだなって思って」
「零……、いつの間にそんなにじじくさくなったんだ?」
俺の発した言葉が意外過ぎるのか、壱の呆れた声音が聞こえてくる。
「ロマンチストと言え」
「はぁ!? 零がロマンチストとかないだろ!」
「お、お前な!」
俺は壱の腕を掴み向き合うと、目線は絡み合った。しばらく目は合ったままで、壱はその目も腕も離そうとはせずに、ただ、じっと俺を真っ直ぐに見て来ていた。俺はその瞳に吸い込まれるような感情が込み上げてくる。その時、下の道路を通っている車からクラクションが鳴り響き、俺は我に返った。壱の腕を離して、再び目線を走る車へと向き直した。
「……零?」
「なにも考えずにさ……、生きていけたらどんなに楽なんだろうな……」
あの繋がっていっているテールランプの光の様に、俺の時間もずっと続けばいいのに、それが壱と一緒に過ごす時間へと交わる事が出来たらどんなにいいのか……。
「零……?」
「なんでもない……帰ろうか」
俺の様子を心配そうに伺ってくる壱に目線を向けては、自宅への帰路へと足を向け歩き出した。
―32―
チームでの大会がほとんど終わったのだろう、予定が空くようになった壱と、よく学校でも顔を合わせることが多くなった。土日の予定も空くようになったのか、壱から買い物に付き合ってくれとか連絡が来るけど、俺はそれを断り続けた。
俺は自分の部屋で一人、机に向かいアルバムを開く。そのアルバムは幼い頃からの写真が並べられていた。ほとんどが隣には壱の姿があった。チームで大会に参加したものがほとんどだが、優勝カップを手にして嬉しそうに笑い合っている幼い頃の俺と壱。そんな写真を眺めていると、切なさとか懐かしさとか虚しさが入り混じる感情が吹き出てくる。そのアルバムの最後のページに一枚の便箋を挟んだ。この便箋は、いつか壱に渡せればいいと思っている。
前に壱が俺に言い掛けた、俺が遮った好きだという言葉を、これに綴って壱に伝えたい。それにいつか壱が気付いた時に、壱の気持ちが軽くなっていればいい。そう願いを込めて。
「あれ? 零、まだ居たの? 今日は予約してた日じゃないの?」
アルバムを机の引き出しに仕舞うと、部屋に母親が訪れてきた。
「あ……、うん。そろそろ出ようと思ってた」
「気を付けて行ってくるのよ」
「うん、大丈夫」
いつものように母親と会話を交わし、俺は出掛ける為に身支度を済ませる。Tシャツに薄手の長袖のボタンシャツで大丈夫だろう……、今日はそんなに寒くない天気だった。鞄を手にして、俺は部屋を後にした。
外に出て、壱の部屋を見上げる、壱の部屋の窓はカーテンが開いてあるけど、壱が部屋に居る様子はなかった。今日……、確か、壱に買い物に付き合ってくれと誘われていた日だった気がした。どんな理由にしても断るつもりでいたから、自分の用事を確認もせずに断ってたし、日にちの確認もしてなかったから、今日だったのか定かでもないけど。
チームで試合でも入ったのかな……。俺と違って、壱は出掛ける事が多いからそんなに気にすることでもないけど……。
俺はそのまま、目的地に向かう為、足を進め始めた。
―33―
用事を済ませた帰り道。毎回、帰りはどうも足が重く感じてしまう。
「はぁ……」
自然とため息が漏れる事も多い、行き交う人混みの中、電車に乗るため駅に向かう。人混みは本当に苦手だ。目的地が街中になければ、一人でこんなところに来ることなんてほとんどないだろう。天気予報ではそんなに気温は高くなかったのに、人混みのせいか、体感温度は高く感じる。俺は暑さを凌ぐため、襟元を仰ぎながら歩き続けていた。夏日でもないから、そんなに暑いわけでもないが、日差しが当たるところはまだ暑い。風が涼しい事が救いだった。
駅ビルに入るとまだ冷房を使っているようで、涼しさを感じた。テナントが並んでいる中、駅の改札口へと向かう。ふとテナントのうちのファーストフード店に目線を向けると、窓越しのカウンター席に見覚えのある人影を見掛けた。
俺は思わず、そこで立ち止まってしまった。その人影は二つ。壱と渋基の姿だった。
「…………」
壱と渋基は笑い合いながら、楽しそうに話をしていた。
壱が前に別れたと言っていた、でもあの様子だと、渋基にはまだ気持ちは残っている。復縁したのか、別れたと言った言葉が偽りだったのか……。楽しそうにしている壱と渋基の姿を見ていると、不穏な気持ちが胸を支配して、息苦しくなるのを感じる。
暑さなのか、緊張感からなのか、額に汗が垂れるのを感じ、俺は腕でそれを拭う。俺はその状況を見ているのに耐えられずに、その場から離れ再び改札口へと足を運んだ。
電車に揺られながらも、さっきの状況が頭から離れずに、今でも目の前で二人が楽しそうに話している、それを見て耐えられない自分が居た。こんなにもあの場面を見ただけで、自分の気持ちが沈んでしまうなんて思いもしなかった。
「復縁……、嘘」
それがどっちだったとしても、二人はまた付き合っている。それは事実なのだろうか……。壱と話している渋基の嬉しそうな表情は、渋基の今の気持ちは見てるだけで判ったのは確か。
他の人と幸せになってくれればいい、そう願っても、それを完全に願えないで居る。こんなにもショックを受けるなんて、俺はまだ、腹をくくれないでいるのか……。
―34―
用事を済ませ、俺はそのままどこも寄らずに自宅に帰った。何処かに寄るような気分には、なれなかったという事もあるけど。
「れーい? 今日いっちゃんのお家、誰も居ないんだってー!」
部屋に居ると、一階に居る母親の声が聞こえてきた。俺は部屋から出て、階段を途中まで降りて行く。階段の一番下には、お盆に何かを乗せて持っている母親の姿が目に入った。
「だから?」
「夕飯頼まれたのよ! 持って行って?」
母親が持っていたお盆には、壱の夜ご飯が用意されているようだ。壱の両親は共働きだから、こうやって夕飯を頼まれることはよくある事で、前は家に来て食べて行っていたのだが、最近では俺の母親が持って行ってあげてる事が多くなっていたようだ。壱が家に来なくなった事が原因なんだけど。
「やだ……、自分で持って行って」
「最近、いっちゃん来ないから寂しいけどね……、お母さん忙しいのよ、もうすぐドラマ始まるのよ」
階段の途中に居たまま、俺はその壁に寄りかかり、母親の対応をする。
「置いてきてから見ればいいだろーよ!?」
「話込んじゃって、始まっちゃったらどうするのよ……」
「録画すればいいじゃん」
「リアルタイムで見たいの」
母親と言い合いしている自分が、馬鹿らしくなってきた。頼む理由が、本当馬鹿らしくて……、それに対抗する自分がもっと馬鹿らしい。
「………………判った」
母親に対抗する気力がなくなり、俺は引き受ける事にしてしまった。今日だけは本当……、会いたくなかったのに。
あの時、二人を見たなんて言わなきゃいいだけだし、部屋に置いて渡したら、さっさと戻ってくればいいんだよな……。さっさと置いて来よう。途中まで降りていた階段を降り終えて、母親からお盆を受け取り、玄関へと向かった。
―35―
壱の家の玄関を開けると、母親が料理を運んでくるのが判ってるのか、玄関に鍵は掛かっていなく、俺はそのまま家の中に入った。壱の部屋は階段を登って直ぐに位置している。階段を登り、壱の部屋のドアを予告なしに俺は開け放った。
「零!?」
「……飯」
「連絡してから来いよ! びっくりするだろ!?」
壱はドアが開いた事に驚いたのか、ベットに横になっていたであろう、ベッドの上で起き上がり俺の方に目線を向け、悪態を付かれた。そんな壱に気にも留めずに、俺は壱の学習机に持ってきた夕飯のお盆を置く。壱は手にしていたスマホを、ベッドのサイドテーブルに置いていた。
「渋基?」
きっと俺が来るまで電話でもしていたのであろう……、慌てて電話を切ったのか、打ち切ったのかそれは判らないが、俺は何故かその相手を確認してしまった。
「え? あ、うん」
「別に切んなくていいよ……、俺すぐ戻るし」
「今度の試合の話してただけだし……もう、終わってたし」
「隠さなくてもいいのに」
ベッドの上で胡坐をかいて、俺に向かい言葉を放つ壱。なんだかそれが、俺には言い訳をしているようにしか聞こえなかった。
「……何を?」
「今日、楽しそうにしてたじゃん」
「え?」
さっさと夕飯を置いて、さっさと戻ろうと思ったのに、渋基の話題なんてするつもりなかったのに。スマホで話していたんだろうと思ったら、俺は聞かずには居られなかった。
―36―
「ファーストフード? 零居たの? なんであんなところに?」
今日と言った事で、壱は何を言われたのか直ぐに判ったのか、疑問符を浮かべている表情で聞き返してくる。
「用事があったから……」
何か用事がなければ行かない場所ではある、そこを見掛けたという俺を不思議に思ったのであろう、俺は壱の問い掛けに返すと壱は首を左右に振り、俺が思っている事を理解しているのか否定の言葉を述べる。
「あー……、元々ダチだったし、話さなくなる関係でもないし」
「別に……、別れてないなら、別れてないでいいんじゃね?」
俺はベットに座る壱を立ったままで見下ろし、冷静になれと自分に言い聞かせるも、壱へと掛ける言葉はどうしても、棘をつけずには居られなかった。
「それは! 別れてる!」
あんなに嬉しそうに話していた渋基の表情を見て、別れているという事実がどうも信じられる事が俺には出来なかった。俺は、壱の座るベットへと膝を立たせ距離を近寄らせた。
「零……?」
壱の肩を押しベットに横にさせて、俺はその壱の身体に跨り見下ろすと、壱は目を見開いて俺を見上げていた。
「だったらさ……、俺とヤれる? 別れたなら問題ないよな?」
「え?」
何を言ってしまったのか、自分で自分に驚いたが、それ以上に壱の方が驚きの表情を隠せずにいるようだった。俺が壱の頬を撫でると、壱は目を何度も瞬かせたが、俺がしようとしている事の意図を理解したのか、抵抗しようとはしてこなかった。
―37―
カーテンが閉まっている薄暗い壱の部屋で、その部屋のベットの上。壱が俺の部屋に来ることも多かったが、俺も壱の部屋に来ることも多かった。壱は部屋に物を置くことをあまり好まない。壱自身のゲームとかも、俺の部屋に置いておく事が多い。最低限のものしか置いておかない壱。
何度も来ている見慣れた壱の部屋。見慣れた壱のベットで、俺は壱を押し倒していた。壱が抵抗すれば、今の俺なら押さえつけてでも襲っていたかもしれないが、壱は抵抗する素振りを見せなかった。壱を見下ろしたまま、俺は壱の頬を体温を確かめるように撫でる。そのまま壱の下唇を親指でなぞる、その間壱は、ずっと俺の目を見て離さないでいた。俺も壱の目を見たまま離さずにいると、壱は微かに口を開いて来た。
その開かれた唇に自身の親指を入れると、壱は両目を閉じて、その指をくわえ舌を使い舐めてくる。
「んん……、んん」
俺の指は壱の唾液に寄ってぬめりを帯びていき、半開きの壱の口先からはその唾液が滴り落ちる。俺は壱の口の中を親指で、犯している気分になっていた。
「壱夜……」
俺が壱の名を口にすると、壱は目を開き黙ったまま目線を向けてきた。壱の口から指を引き抜くと、壱は眉間に皺を寄せ目尻を下げてくる。俺はそのまま壱の唇に自分の唇を重ねた。
「は、ん……ん」
唇を重ねると、壱の息遣いが口と口の間から漏れる。その息遣いに、俺は興奮を覚えていた。重ねたままで壱の唇を舐めていると、壱は唇を開く、開いた唇の中に俺は舌を侵入させた。侵入させると、壱の舌が俺の舌に絡まってくる。互いの舌同士を舐め合い、壱に覆いかぶさっている俺は、重力により唾液が壱の口の中に垂れてしまう。
「んん、れ……い」
唇を離し、壱を見下ろすと、目は虚ろ気味で口を半開きにさせ、口の端からは受けきれなかった俺の唾液が垂れていた。その垂れた唾液を俺は舐めて、壱の口元を綺麗にしてやる。微かに俺を呼ぶ声が聞こえ、額同士を触れさせながら目線を絡ませた。
―38―
「……零」
「…………」
額同士を触れさせたままで、壱は俺の名を再度呼ぶ。壱の呼び掛けに、俺は答える事を今更ながら戸惑った。そのままで居ると壱は目を細め笑い掛けてくるから、俺は思わず目を見開いてしまった。壱のその笑みは、このまま先に進んでもいいという事なのだろうか、俺は恐る恐るながらも、壱のシャツのボタンへと手を掛けた。
壱のシャツのボタンに手を掛け一つ一つ外していくと、壱は俺の上着にしていたシャツの襟もとに手を掛けてきた。俺達は互いに互いの上着を脱がせていっていた。
気付いた時には互いで上半身は裸になっていた。その肌同士の温もりを確かめたく、俺はそのまま壱を抱きしめていた。壱の裸とか、初めて見るものではなかったが、こういう状態で見るのは初めてで、凄く自分を昂ぶらせていた。ベットの上で覆い被さったまま抱きしめていると、壱は俺の背中に腕を回してきていた。その腕が俺の肌を確かめているように背中を撫でている。俺は抱きしめたままで、壱の首筋に軽くキスをする。キスをすると、壱の身体はそれに反応したのか、一瞬震わせていた。
「……はぁ、あ」
そのまま壱の身体を舐め回していると、壱の口からは荒れた息が漏れ始めていた。首の筋をなぞるように、舌を走らせる。舌を鎖骨に移動させ、さらにそのまま壱の胸元へと移動させた。
「は、んん……ん」
壱の胸の突起を指で弄りながら、反対側は舌で転がした。何度もそれを繰り返していると、段々とそれは硬くなっていった。
「そ……こ、ばっか、だめ、零」
硬くなったそこを舐めたままで、弄っていた指は壱の身体を這わせて、身体中を撫でながら徐々にと下へと移動させていく。その手を壱は突如握りしめてきた。
「……壱夜?」
握ってきた手はさほど力が込められているわけでもなく、俺の手の行方を阻止しているようには感じなかった。胸元に埋めていた顔を上げて、壱の表情を確認すると、壱の頬は紅潮していて、熱を帯びていた。壱は俺と目線を合わせたままで、俺の手を握る手とは逆の手で自らのベルトを外し始めた。
壱も……、俺を求めてくれている、その行為は俺自身を昂ぶらせるのには充分過ぎるものだった。
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「はぁ、……れ、い……きもちっ」
互いのズボンのファスナーを下ろし、互いのモノが露わになる。互い同士を擦り合わせると、肉質と熱くなっている体温を感じ、互いの先走りが卑猥な音を、部屋に響き渡せていた。
俺の手の中には、壱と俺の自身が擦り合わさりながら存在している。俺が手を使い擦り合わせていると、壱の腰はそれに合わせて揺れる。互いの動きが、さらに擦り合わせる速度を速めていた。
「あ……、んぁ」
擦り合わせているから、壱の形がさらに硬くなり、張り詰めているのに気付きやすかった。壱は俺の背に腕を回していて、その回している手の力が込められるのを感じる。
「零……、イキそっ」
揺れている腰の動きが止まったかと思えば、壱はそう切なげに訴えてきた。それに答えるべく、俺は擦り合わせているのをさらに速めた。
「あぁ……、ん、待って……、れ、い……も」
「ん、俺も……イく」
そんなの言われなくても、俺も当に限界だった。俺がそう言うと、壱は嬉しそうに目を細めていた。そんな壱の頬に唇を添えながら、互いのモノを強く擦り合わせ、俺達は互いに達していた。
「はぁはぁ……はぁ」
「はぁはぁ」
達した達成感と疲労感で俺は、そのまま壱に覆い被さり乱れた息を整えていた。壱も息を整えながら、俺の背中を摩ってくれていた。呼吸が整った頃、俺は壱から身体を離して起き上がらせた。起き上がると壱は俺の腕に手を伸ばして、見上げてくる。俺はその手を握って自身の口元に近寄らせた。壱のベットは、俺達が放った白濁の液で汚れていた。でも今の俺達は、それを気にしている余裕なんてなかった。
壱のズボンと下着を脱がせ、ベットの下へと放り投げる。そのまま俺は、壱の両足を広げさせた。
「零……、そこ」
「ん?」
壱は横になりながらもサイドテーブルの方に目線を向け、何かを訴えてくる。何かと思い、サイドテーブルの引き出しを開けると、そこには潤滑油のボトルが入っていた。
「壱夜……これ」
「ん」
もしかしてと思ったが、そのボトルが未開封だったことに安心している自分がいた。
「さっきも勘違いしてたみたいだけど、渋基とは何もしてないからな、ちょープラトニック」
「…………こんな時に言わなくてもいい」
俺は表情に出てしまっていたのだろう、安心する言葉を壱はまた口にしてくれた。
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