イィヤァァァァーッ！ 変態だ！ ストリーキングだ！ 露出狂だ！ (俺はいま、露出狂にお姫様抱っこされている) 地震の揺れは既に治まったみたいだ。 しかし！ 一難去って、また一難。 否(いな)。 地震よりも状況は最悪……かも知れない。 俺を軽々抱く腕は逞(たくま)しく、筋肉質で、陶磁のようだ。 まるで、神話の時代。 それでなければ、ルネサンスの芸術から抜け出てきたような完璧な肉体美である。 ………そう。 ………ゆえに。 ………だからこそ。 …………………………揺れているのだ。 ぷらぷら 彼の下半身の中心で。 いわゆる男性の象徴。 言い替えれば、イチモツ。 況(いわ)んや…… (雄しべ) 隠す事なく、ぷらんぷらんと揺れている。 (……おっきいな) やっぱりガイジンさんだからなのか。 一目瞭然でサイズが違う。 ……って。なにドキドキしてるだよ、俺っ。 俺を抱っこしているのは、なにを隠そう…… 否、ナニも隠さず。 どう見たって。 (金髪碧眼のガイジンさんで……) 露出狂なんだー！ 「あんた、なんなんだっ？」 いやいや、相手はガイジンさんだ。 穏便に下ろして頂くには、ここは一つ英語で尋ねるべきだろう。 ……………… ……………… ……………… 『あなたは露出狂ですか？』 ……って、英語でなんて言うんだろう。 (そんなの学校で習っとらんわー！) こうなったら、ガイジンさんに日本語で喋って貰うしかない。 「Can you speak Japanese？」 ときはいま あめがしたしる ごがくりょく* (あ……『なけなしの語学力を試す時がきた』ってのを、俺なりに風流に詠んでみました♪) 敵は玉川上水にあり！ さぁ、どうくる？ガイジンさん。 『Yes,I can.』と答えてくれ！ しかし…… 一発逆転。勝利を誓った希望は、あえなく打ち砕かれた。 三日天下。 それどころか、三分間の天下すら取れなかったのである。 俺は声を発する事さえできなかった。 正確には、できなくなった。 俺の唇に乗せられた、生あたたかい感触…… これって、もしかして。 (唇～～★) 俺っ、キスされてるーっ！ *〔脚注〕明智光秀が本能寺の変前に愛宕山で詠んだ和歌『時は今 天が下知る 五月哉』より