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Ⅰ グッド・バイ③

Can you speak Japanese? 直訳すると『私にキスしてください』…… 絶対ちがーう。 乏しき英語力の俺にだって分かるぞ、それくらい! (俺はキスなんか求めてないーッ) ようやく唇が離れた時には、文句をぶつける声すら奪われていた。 露出狂のガイジンさんが好き勝手、口内を蹂躙するものだから。 つぅっと透明な糸が引いて、斜光に浮かぶ。 ハァハァハァ 慣れない口づけで、情けなくも俺の息は上がってしまっている。 アァっ、それでも文句の一つは言ってやりたい。幾らガイジンだからって、このスキンシップはあんまりだ! なけなしの英語力で文句を考えるけど……ダメだ。 頭の芯がぼぅっとして、全然、思考が働かない。 ………………その時だった。 「メロスだ」 吐息が耳元でささめいた。 「お前は何者かと尋ねただろう?」 ガイジンさん、日本語喋ってる。 つか、日本語ペラペラ。 (あっ) 確かに俺。『Can you speak Japanese?』の前に聞いてるよ。 『あんた、なんなんだっ?』って。 「俺の名前はメロスだ」 …………………………メロス、って。 俺の知るメロスは一人しかいない。 まさか。 でも。 (ここは玉川上水) 太宰先生の終焉の地である。 メロスって、まさか……… 「『走れメロス』のメロスぅ~っ★」

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