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Ⅱ パンドラの匣③
その数字には悪魔が宿る……
「メロス……」
お前は一体、何者で……
「本当に、地獄の王なのか」
ひらり。
茜が散らした黒い雪は止まない。
はらりと、羽が降る。
(太宰先生はなぜ、メロスを封印したんだ?)
「地獄は、死後の国ではない。ある一人の医師が造った異空間だ」
今生ではできなかった研究を成就させるために造った異空間《地獄》
「地獄を造った男は、統帥 と名乗り、三人の助手を宰相 に据えた。その下に、七人の幹部を従えた。死者の遺体をマルタと呼んで収集する」
「ちょっと待てよッ」
マルタ、という呼称。
そして。
一人の統帥、三人の宰相、七人の幹部
「奴らはなァ、日本敗戦後に造った地獄で、今も地獄を繰り返してんだよ」
その数字には悪魔が宿る……
「永遠の命の生成」
一人の統帥、三人の宰相、七人の幹部
数字の並びを逆にすると……
731
戦時中。満州を拠点に、被検体をマルタと呼び、人体実験を行った特務機関。
731部隊。
彼らの目的は……
生物兵器の開発。
「奴らは731部隊の生き残りだ。奴らは永遠の命を生成し、決して死なない至上最悪の生物兵器を創造する。それを使って……」
この国を転覆させる。
日本のみならず、世界を。
「倫理も価値観も、命の重みも全てを奪う。全てを逆転させる。研究という名のもとに、遺伝子操作で管理された優性順位が全てを決定する、殺戮の世界を産み落とす」
禁忌の闇が開かれた時。
数字に悪魔が宿った。
悪魔の数字は『7』
「『7 』と呼ばれる奴らを潰すために、俺はクソ太宰に……」
刹那。
俺の視界は真っ赤に染まった。
メロスの胸から噴き出した、血。
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