20 / 53

第20話 まさかまさかの

くあぁっ…眠い。 欠伸を噛み殺しつつ、ハッピーに引っ張られて歩く。 お~いいぞハッピー。 そのまま俺を連れていってくれぇ…。 俺はいつもローテーションで散歩コースを変えている。 ほんの少し遠いが、この市内でも大きい通称『みんなの公園』は広くて色んな犬の散歩もしているから、挨拶するのが楽しくて最低週に3日は来ている。 森の様に大きな木がたくさん植えてあって、芝生も綺麗で、季節の花も咲いている。 中央には池があって、そこを泳ぐ鯉や鴨を眺めるのも好きなんだ。 あと土とはいえちゃんと舗装された道があって、散歩やジョギングにはピッタリだ。 「今日も天気いいなぁ…」 空を見上げて呟いた。 それから、視線を前に向けてぼちぼち歩く。 日曜の朝だからか、いつもより人が多い気がする。 いつもは見ないおじさんも日曜の朝だけは、ウォーキングしてるみたいだ。 でも、週一とか意味ないし。 あのベンチに座ってるおばさんは、ランニングして疲れたら休憩するのがお決まり。 そしてジュース飲んでドーナツ食べて…休憩はいいけど、大量に飲み食いしたらダイエットの意味がないの教えてあげたい。 あと、定期的に会うのがトイ・プードルのリリーちゃん。と、飼い主のお姉さん。 擦れ違う度に、リリーちゃんはメチャクチャ吠えまくるし、お姉さんは眉毛犬ハッピーに対して小バカにした笑いを向けてくる。 くそうっ! 言っときますけど、お宅のリリーちゃん。貴女に似て嫌味な顔してますよ!! と、まぁこんな感じで。 これが、なかなか楽しいんだよな。 (リリーちゃんと、意地悪そうな飼い主除く。) 顔見知りの愛犬家の人も結構出来たし! ただ、ひとつ問題が…。 「うわぁっ?!ハッピー!!!!!」 グイッと強烈な力で引かれて、俺は転びそうになるのをなんとか耐えた。 ハッピーの突然起こす、この引っ張り癖だ。 「って、わあっ!?」 いつも耐えてるが、今日は何故かまさかの第2弾の引きが…しかも完璧に予想外で。 ビタンッ!! そして、俺は無様にもその場に倒れてしまったのだった。

ともだちにシェアしよう!