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第40話 特別扱い

「おい、七瀬もえ」 喜びの小躍りが一段落ついた頃、呼ばれてハッ!!となってシャキッ!!と立ち上がった俺は、神の方を見た。 さっきからどうしても気になって仕方のない事がある。 「ところで、あのさ~俺の名前『もえ』じゃないから」 さっきからずっと否定しよう訂正しようと思ってた。 名前、違うんだけど。 俺がしかめっ面で訴えるが「?」という顔をしている。 どんな顔でもイケメンってのは、卑怯だと思うのは俺だけだろうか。 もう一度、誤解を解こうと説明をする。 「漢字が萌だから、冗談で友だちが言ってるだけで」 「あぁ、ハジメだろ?」 「そうだけど。知ってるなら、」 「七瀬、はじめ。俺はこれから雇用主だ」 え? 突然何言ってるの、この人。 「違うか。お前は俺に借りがあるからな…。なら下僕か」 ええと…何だって? 「だから下僕であるお前の呼び方は、俺が決める」 今度こそ間違いなく下僕って、しかもドヤ顔で言い放ちやがった! 「下僕ってなんだっ!!失礼極まりないヤツだな!!」 「ん、じゃぁペット?」 「あんまり変わってないしっ!」 けど、この人大丈夫? 王子様の思考回路、壊れてないか。 「ってことで、もえって呼ぶ事に決めたから」 「ちょっ、それっ、どういう理屈ですかね。王子様?」 俺がムッとしながら問いかけると、神がフフンと鼻で笑う。 「俺以外に『もえ』なんて呼ぶヤツいないだろ?」 「いないに決まってんだろ」 だから何。 「この俺様がおまえを特別扱いしてやるよ」 語尾が笑いを含んでるのは、気のせいではないはず。 「光栄に思えよ。も、え、くん」 特別扱いとか面白がってるだけだろがッ、このエセ王子め!! もちろん遠慮するっての!

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