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器用なのか不器用なのか
「んっ、んん…」
ここどこ?。なんで俺全裸なわけ?。
目が覚めたのは、高藤さんが俺の唇にそっとキスをしたから。
「…っ、ごめん。起こすつもりはなかったんだ」
「たか…藤さん?、なんで俺…、はっ!」
そうだ。俺は高藤さんと…、なんで忘れてたんだよ。
俺はすぐに高藤さんから目を離した。そしたら、高藤さんはちょっと笑って、
「君が最後にイッてから、気を失っちゃって。そのまま寝てたんだよ」
恥ずい。初めてして気絶するとか。どんだけ俺馬鹿なんだよ。
「恥ずかしがってる君は、とても可愛いね」
!?。何言ってんだよこの人は。
「あ、そうそう。セックスした後に聞くのも変だけど、名前教えてくれる?。ずっと『君』って言うのも嫌だからさ」
あ、そっか。すっかり忘れてた。
「橘 龍馬です。…なんか変ですね。順番めちゃめちゃで、ははっ」
「そうだね。…あと、泊まってよかったの?。家族とか心配してるんじゃない?」
「大丈夫ですよ。俺四人兄妹で姉貴二人と妹一人なんで、孫の心配はいらないんですよ。だから、多分大丈夫ですよ」
「…そういうんじゃないんだけどな」
ん?、なんて?。
ボソッと言った言葉は、俺には聞こえなかった。
聞き返そうとした時に、
「ご飯食べてく?」
「あ、はいっ」
ま、いっか。
「龍馬君は、朝ってパン?、ご飯?」
ヤバい。名前呼ばれただけなのに、めっちゃ嬉しい。
高藤さんに続いて、ベットを下りようとした時。
「バラバラなんですよね。だから、どっ、うわぁ!」
どんどん恥ずいじゃん。
勢いよく俺はベットから落ちた。
「そうか、また体が…。よし」
高藤さんは俺をベッドに乗せてから、クローゼットから服とかを取り出してきて、俺に着せ始めた。
「おじさんセンスだから、龍馬君からしたら嫌だろうけど、今だけ我慢してね」
これが高藤さんのパンツ…。
「嬉しいですよ!。高藤さんの服が着れるって」
特にパンツ!。
高藤さんは微笑んだ。
「あ、あと。俺昨日、体中ベッタベタじゃなかったでしたっけ?」
「俺が勝手に拭いたんだよ。さすがにそのままは可哀想だからさ」
「すみませんでした。とことん迷惑かけて…」
俺はうつむく。
「なんで謝るの?。どんどん迷惑かけてよ」
なんで高藤さんはそんなに優しいんだよ。どんどん好きになってくじゃん。
ベッドから足を下ろしてる俺の前に座る高藤さんにハグをした。
「…好き、です」
…?。なに、なに言ってんだよ、俺!?。
高藤さんは俺の腰にゆっくり手を回して。
「僕も好きだよ」
耳元で言われた言葉は、妙に心に響いた。
「ねぇ、僕にキスして」
えっ!。そんな恥ずいことできねぇよ。
「無理だって…」
「龍馬君は僕のこと嫌い?」
「好き…だけど」
声も手も体も性格はまだあんまり知らねぇけど、全部が大好きだ!。
「じゃあ、キスも出来るはずじゃないか?」
そう言って、高藤さんは目を閉じた。
高藤さんのキス待ち顔、可愛い…。
ハグしてた手を高藤さんの顔に両手を当てて、ゆっくり近づいてキスをした。
待て、どんくらいの時間で止めていいんだ?。出来るならずっとこのままがいいけど、高藤さんに嫌われたくねぇし、でも早く終わりたくねぇし。あぁ、どうしよう!。
いろいろ考えてたら、高藤さんが鼻で笑った。そんで俺と唇を合わせたまんま。
「梅干しみたい」
って、ちょっと笑いながら言われた。
俺からのキスは初めてだから、顔がしわくちゃになっているんだろうか。俺は目をそらすために、唇を離した。
「ご飯食べようか」
俺は目をそらしたまんま、うなづいた。そしたら、高藤さんは俺を姫抱きして、リビングに連れてっ行った。
五十何キロある俺を軽々しく姫抱き出来るって、相当鍛えれんのかな?。
そんなことを考えてたら、無意識に高藤さんの胸を触った。
「ない…」
「…僕におっぱいはないよ」
高藤さんは笑った。
「すみませんっ、違うんです。俺を運べるから、鍛えてんのかなって、そんで無意識に…」
「若い頃によく鍛えててね。それがまだ残ってる感」
「すげぇですね」
俺はソファに座らせられた。
「ありがとう。テレビでも見てて。すぐご飯作るから」
「ありがとうございます」
右側にはキッチンがあって、高藤さんが今冷蔵庫の中を見てる。
何作ってくれんのかな〜。高藤さんの手料理が食える日が来るなんて。幸せだー!。
俺はテレビをつけた。そこには俺が他の男でもドキドキすんのか試すために調べた鮎川真守が出てた。
いいよな〜、金持ちっていいよな〜。楽なんだろうな〜。しかもイケメンだし、ホモって堂々と言ってるし。
この人は、日本で三本の指に入る大企業の鮎川財閥の御曹司。そんで、アイチューブとかワク動とかで有名になって、あとあと、御曹司ってのが分かった感じ。俺も動画見てるけど、主に歌ってみた投稿、でバンドもやってるし上手ぇ。今流行りに流行ってる人だ。
んなこた、どーでもいーんだ。 高藤さんとこれからどうしよう…。付き合うことは出来たけど、本当に家族はいいんだろうか…。高藤さんの家族とかも、大丈夫なんだろうか?。
「…どうしたの?。バライティ見てる顔じゃないけど」
高藤さんは手をタオルで拭きながら俺を見ている。
「ちょっと…、考え事を」
「それって、今後のこと?」
俺は小さくうなづいた。
「龍馬君が飽きたら別れよう」
「飽きませんよ!。俺はずっと高藤さんがす…」
「…ん?、なんて言おうとしたの?」
言えねぇよ。さっきは衝動的に言っちまったけど、もっと大事に言いたいし。
「何でもねぇ。飯まだですか?!」
ソファに勢いよく座って、テレビを見た。
「あとちょっとでできるから」
そう言って、俺の隣に座った。
…なんか、近くね?。
高藤さんは俺の太ももに手を置いて。
「僕は龍馬君が好きだ。もし、龍馬君も同じ気持ちならば、僕の顔を見て」
…。顔を見たい。でも、恥ずいし…。
でも…、自分に嘘はつきたくねぇし。
高藤さんはなんでか知んないけど目が潤んでて、俺に熱いハグをした。
「なんで泣いてんすか」
「龍馬君が可愛いからだよ」
「意味わかんないんですけど…」
高藤さんの方が可愛いと思うけどな。
「嘘をつくのはやめるよ。何が何でも龍馬君を手放さない、家族に反対されても、龍馬君の家族が反対しても迷惑はかけるだろうけど、手放さないから」
「高藤さん…」
こんな告白されたら、もっと好きになっちまうじゃねぇかよ。
「俺だって、家族に反対されたって、縁切ってでも高藤さんを選びますよ!」
「んん…、鼓膜潰れちゃうよ」
苦笑いをした。
「だったら、離れたらいいじゃないですか」
高藤さんはさっきから、俺の肩にずっと顎を置いてる。
「出来ると思う?」
「…俺に聞かないで下さいよ」
高藤さんはちょっと笑って、
「そうだね」
その日の朝食は、遅めの昼食になった。
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