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第2話
そもそも西辻が柿本への個人授業を請け負うきっかけは、柿本が中間テストで赤点を取ったのに、その後の補習授業もサボったからだ。
最初に柿本への個人授業を依頼されたときは、その生徒をちゃらちゃらした不良か、勉学に全くやる気を出せない人間かと思っていたが。西辻と一対一の授業はしっかり受けていたし、休み時間に突然呼び止められ、柿本から質問してくるときもあった。
そして期末テストで、柿本は平均点以上を取った。その答案を見たときには、なんだか教師としての感動を覚えて。
「やっぱり、きみはやれば出来るんじゃないか。また解らなくなったら、自分の所に相談しに来なよ」
茶色く染められた髪の毛をくしゃっと撫でると、満面の笑顔で本心から褒めた。頭に乗せた手は即座に退けられたが、
「……どーもでした」
小声の謝礼の言葉と共に、軽い会釈を返されて。
それで西辻と柿本との個人授業は終わった……筈だった。
成績を伸ばしたいための一対一の英語指導ならば、むしろ喜んで請け負うが。何故「個人授業の続き」が、生徒から椅子に縛り付けられて、衣服を脱がされている教師の図、になるんだ?
訳が分からないまま、西辻の着ていたワイシャツがパサッ、と床に落とされ。次に柿本の指は、素肌の上のタンクトップを脱がそうとする。だが、手首を後ろで固定されているため、タンクトップはなかなか西辻の身体から剥がれない。
柿本はもどかしそうに、チッ、と舌打ちをして。脚元に置かれたバッグをごそごそと探ると、ハサミを手に取り、タンクトップをジョキジョキと切り裂き始めた。
「ちょっ……おい! ちょっと! やめてくれよ……」
ハサミで下着を切り裂かれて、西辻の上半身はどんどん露わになっていく。
「男性教師の素肌を晒して、何が楽しいんだよぅ」
半ば泣きながら問い掛けると、柿本はじろり、と上目遣いで睨みつけてくる。
「だって……そうしねーと直に触れねーじゃん」
当たり前の事を訊くな、みたいに言われて。そのうちタンクトップは、西辻の腰回りに引っ掛かった布切れと化した。
ふう、と一息ついて、ハサミを床に置いた柿本は、いきなり西辻の脇腹をゴシゴシと擦ってくる。
「ひあっ⁉︎」
思いがけない行動に、奇妙な声が出た。一体こいつは、何を考えているんだ?
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