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第4話
こんなおっさんのーー西辻はもう30半ばだーー性器を触っても、普通の男子高校生なら気持ち悪いだけだろう。柿本も早く汚れた手を洗ってくればいい。それから椅子に縛られた手脚の縄を外してもらおう。
「柔らかい? なんで、どうして硬くない?」
しかし、柿本は自身の手の平と、西辻の性器を交互に見つめながら、呆然と呟く。まるで実験に失敗してショックを受ける科学者の様だ。
「あのなぁ……いきなりこんな事されたって、勃起しないぞ?」
西辻も段々とこの奇妙な環境に慣れて来て。真面目に柿本を諭すが。
「だって、男のコレって、気持ち良くなれば硬くなるもんだろ」
柿本は西辻の下半身を指差して断言する。べたべたと擦る柿本の行動は、何も分かっていない子供の考えた愛撫だったのか? それなら厳しく叱って、理解させないと。
「きみは、とにかく身体を触れば、気持ち良くなる、とでも思っているのか?」
むすっとしている柿本と向き合って語り掛ける。
「まず第一に、縛り付けられて触られても、快楽でなく、恐怖心だけだ」
まぁ、世の中にはこういった行為が性的嗜好な人間もいるが……それを言ったらまた勘違いするか。
「それに何よりも、好きな人、想いが通じ合っている人と触れ合う行為でなければ、気持ち良くなんてならない」
西辻はゆっくりと単語を選んで、本当のセックスとはどんなものか、を教える。
確かにこの状況は、この間の個人授業を思い出すな……授業内容は英語ではなく保健体育だが。
そして「男同士だから気持ち良くない」とは言わずにおこう。
もしも柿本が本当に同性愛者だとしたら、ショックを受けるだろうから。
「でもクラスの奴等は、誰でもいいからセックスしてー、とか言ってるよ?」
床に座って頬杖をついた柿本は、上目遣いで問い掛ける。
「それは……まだ本当の恋愛を知らない、子供だからで」
「じゃあなんで風俗とかあるの」
ズバリと問われて、回答に詰まった。
「80過ぎの爺さんが看護師の尻触ってる、ってニュースでやってたよ」
また返答に困った。男の性欲について真面目に説明するのは、とても難しくて。
「それにっ……俺はあんたを好きなんだから! あんたを好きな人間が触れば、あんたも気持ち良くなるだろ!」
勢い良く立ち上がって、柿本は駄々 を捏 ね始めた。しかし、なんだその理屈は。
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