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第5話

「う…嘘……」 城の扉を開けてすぐ、広がっていた光景はとても無残なものだった。 鼻をツンと刺激する腐敗臭が漂う。 いつも笑顔で挨拶をし、城を守ってくれていた兵士たちは見るも無残なまでに切り刻まれ、何十人もの兵士の死体が転がっている。 目の前の光景と鼻をつく臭いに耐えられず、シエルはその場で嘔吐した。 「はぁ……っ、ぅっ………! ………母様っ……、父様……っ!」 口を抑え、皆が逃げたはずの玉座の間(マ)へ足を運ぶ。 そして、震える足に「とまれ」と念じながら、力を入れて扉を開けた。 「う…………そだ……………」 玉座の間(マ)にある大きなステンドグラスからは大量の陽が差し、照らされているその先には、2つの並んだ玉座。 そして、そこには胸にナイフを突き刺され、 座ったまま死んでいるメジエール国王と王妃の姿があった。 玉座の周りを国民の死体が取り囲んでおり、 全員が胸の上で腕を交差していた。 彼らは皆、支配下に下ることに抵抗したのだ。 この平和な国の誇りにかけて、 彼らは死を選んだ。 シエルは玉座に近づき、 大好きだった母の屍に触れた。 「うわぁっっ!!」 触れた箇所の肉が崩れ、 手にドロっとした感触があった。 美しかった母の顔は鬼の様に恐ろしく、 シエルはこの現状を受け入れられなかった。 こんな無残な殺し方をする人間が、 この世に存在するというのか? 「殺してやる………。殺してやる、殺してやる殺してやるっっ!!!!!」 シエルは復讐を胸に誓い、全員の安らかな眠りを願いながら、城に火をつけて、弔いを上げた。

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