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第7話
「おい、ガキ。これやる」
木箱の上でしゃがみこんでいると、上から声をかけられた。
顔を上げるとそこにはシエルと同じく、フードを被った少年が立っており、手には焼きたてで香ばしい匂いを放つパンが握られていた。
少年はシエルの隣に腰をかけ、手にある温かいパンをシエルに差し出した。
シエルはビクビクしながらそれを受け取り、一口一口よく噛み締めて食べた。
「お兄さん、ありがとうございます……。でも、どうして…?」
「目障りだっただけだ。どうしたんだ、おまえは。こんな小さいくせに親に見放されでもしたか?」
「違うよ…。父様と母様はもう………」
シエルの瞳からは涙が溢れ、言葉もままならない。
少年は乱雑にシエルの頭を撫で、言葉を紡いだ。
「あぁ、やっぱり言わなくていい。でもまぁ、よかったじゃないか、そんなに愛してくれた親がいたなら」
「…………?」
「おまえは家族が好きなんだな」
「うん、大好きだよ!」
シエルは両親を思い出し、笑顔を見せた。
少年は立ち上がり、街の方へ歩いていく。
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