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第12話
「おじさま、ただいま戻りました」
扉を開けて帰宅を知らせるが、宿の中からは返事がなく、どうしたのかと思ってシエルが一歩踏み出そうとした瞬間だった。
「んんっ!!?んーっ!!!んんんーー!!!」
何者かに後ろから睡眠薬を染み込ませたハンカチで鼻と口を塞がれた。
シエルは抵抗しようともがいたが、力が入らずに腕と足を縛られた。
「悪いな、ナヴィ……」
意識を失う寸前に見えたのは、ニヤリとほくそ笑む宿のオーナーの姿だった。
あぁ、売られたのか。
落ちていく意識の中、何故か冷静にそんなことを考えていた。
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