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第25話

シエルは話しかけていいものかと迷いながら、奴隷に声をかけた。 「君はいつからここにいるの?」 「もう1年ほどでしょうか…」 シエルの言葉に、奴隷は淡々と言葉を返した。 「名前は?」 「名前はありません。ここではゴミ箱として扱われておりますので…」 「逃げようと思ったことはないの…?」 「ないですね…。逃げようとした奴隷が首を切られて殺されるのを、私は何度も目にしていますから」 奴隷の口から淡々と語られる衝撃的な事柄に、シエルは言葉を失ってしまった。 そして、キィ…と鉄でできた扉が開き、アルベールが姿を現すと同時に、その女の奴隷は壁際に吹っ飛んだ。 「シエルに必要のないことを吹き込むな。死にたいか?」 アルベールはその目だけで人を殺せるんじゃないかというくらい、鋭い視線で奴隷を睨んだ。 そして一歩、一歩と奴隷に近づき、靴の先で奴隷の顎を蹴り上げた。 「自分の部屋へ戻れ。」 「申し訳ありませんでした。失礼します」 奴隷が部屋を出て行ったのを確認して、アルベールはシエルへと視線を移した。

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