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第35話
シエルが流し終えたことを確認したアルベールは、濡れたままの裸のシエルを連れ、大浴場を出て、一つの部屋に入った。
その部屋は驚くほど広いのに、その真ん中にキングサイズの天蓋付きベッドだけが置いてあるだけで、窓もなく殺風景だ。
アルベールはシエルの手足を繋ぐ鎖をベッドの支柱に固定し、部屋を出ようとベッドを立った。
「嫌!アルベール、行かないで!もう狼なんか嫌だっ!怖い…、怖いよ……」
シエルは濡れた体のまま、アルベールの腰にしがみ付き、ぽろぽろと涙を零した。
一瞬ではあったが、シエルは地下牢を出るときのアルベールの優しく笑った顔が忘れられなかった。
アルベールはチッと舌打ちをして、シエルの腕を払い、シエルをベッドの上に横たわらせた。
「シエル。俺がお前にやった選択肢覚えているか?」
「………性奴隷と、お掃除の…奴隷……」
「違う。"俺の"性奴隷だ。」
「アルベールの……、性奴隷………?」
シエルは目をまん丸にし、ボーッとアルベールを見つめた。
自分の国を滅ぼした張本人だと言うことは分かっているのだが、アルベールの美貌に心酔し、そして自分の中に燻る恋心を消しきれなかった。
さらには、あれだけ無茶苦茶にされ、精神が完全に砕けそうな時にこうやって安心させてくるのだ。
堕ちたくない……。
ドクドクと鳴る心音がバレないようにアルベールに背を向け、気を紛らわせようと口を開いた。
「もう狼は嫌っ…!」
「あぁ。」
「アルベール……、だけ?」
「あぁ。他の奴に抱かれたら許さない」
「どうなるの…?」
急に無言になったアルベールに、シエルは恐る恐る視線を向けると、薄く微笑んだアルベールがシエルの輪郭をツゥッとなぞった。
「その時はそいつごと、
おまえも殺してしまうかもしれないな」
そう言って微笑むアルベールの表情はなんだか苦しそうで、シエルは声を出せずに部屋を出ていくアルベールを見送った。
「あと、奴隷の分際で俺の名を気安く呼ぶな。口の聞き方には気をつけろよ、シエル。」
アルベールはそれだけ言い残し、部屋を後にした。
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