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第46話

「アルベール………」 時間も日付も、今が朝か夜かも分からないシエルには、何もせずに待つこの時間が一番辛かった。 シエルはアルベールの出入り以外に、全く興味を示さなくなった。 返り血を浴びて帰ってきたあの日から、アルベールは一度もこの部屋に来ていない。 何度か奴隷がお粥や、すり下ろしたリンゴを持って来ているが、シエルは一口も口にせず、ただボーッと扉を見つめてアルベールを待っていた。 「はっ……ぁ……、けほっ…!!」 「シエル様、お願いですから一口でも食べてください!私が罰せられます…っ」 喉もカラカラで視界も霞んでいる中、奴隷の言葉にシエルはピクリと反応した。 「アル…さ…まが……君…を………?」 「はい。お願いです。一口だけでも…」 「アル様……呼んで…よ…。ど……して…、来て…くれ…な……の………?」 声を出すのもやっとのくらいなのに、シエルは泣きながら掠れる声で奴隷にそう言った。 奴隷がこくこくと頷き、足早に部屋を出て行った。 自分は一体どうしたというのだろうか。 日に日にあの男に溺れてゆく自分が怖い。 アルベールがいないなら、こうして死んでしまってもいいんじゃないかと思うくらいに溺れてしまっている。 憎くて憎くて仕方ないのに、会えない日を重ねるたびに、自分の中で好きだという気持ちがだんだん膨らんでいるのだ。

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