54 / 266
第54話
「んん………」
シエルが起きるといつも通り、ベッドには自分一人で、両手両足が枷で繋がれていた。
ただ、寝る前の体中に感じた猛烈な痒みはなく、服もちゃんと着せられていた。
一瞬あれは夢だったのではないのかと思ったが、腕に残る引っ掻き傷を見て、現実だと確認させられた。
今も、朝か夜かは分からない。
またこうして、アルベールが訪れるのをベッドで待つだけなのだ。
シエルは昨日の行為を思い出して、羞恥に震えた。
昨日、自分はアルベールに性器を踏まれて感じてしまったのだ。
思い出すだけでも恥ずかしくて、シエルは顔を真っ赤に染めた。
自分の口から出た言葉まで鮮明に覚えていて、もうアルベールに合わせる顔がないと枕に顔を伏せる。
でも、それと同時にアルベールが「いい子だ。」と微笑んでくれたことも思い出して、ドキドキと胸が高鳴った。
どうしたら、また褒めてもらえるだろうか。
アルベールに少しでも意識してほしい。
シエルの中の欲望はどんどん大きくなっていく。
アルベールの瞳、声、唇、腕や綺麗に割れた腹筋にさえ目を奪われた。
触りたい
抱きしめて欲しい
そんな欲までもが、心の中で静かに渦巻いているのだ。
愛のないセックスは嫌でたまらないはずなのに、虚しいはずなのに、自分の体はもうアルベールなしでは生きていけないのではないかというくらいに、アルベールを求めている。
シエルはこんな短期間で、心も体も従順な性奴隷に成りかけてしまっている自分に笑いが漏れた。
ともだちにシェアしよう!