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第55話
部屋の扉が開き、奴隷の人が食事を持ってきたのかと、シエルは顔をそらした。
「シエル」
「………アル…様ッ!」
いつもならまだ帰ってこないはずのアルベールが部屋に訪れ、シエルはピンっと背筋を伸ばした。
アルベールは静かにベッドへ近づき、シエルの隣に腰かけた。
シエルはそっとアルベールの表情を確認したが、たまに見る蔑んだ目でもなく、怒っている様子でもなかったため、遠慮がちにすり寄った。
「どうした、シエル」
「えと…、今日は帰ってくるの早かったなぁって…」
「あぁ。今日は商談だけだったからな」
「ぅ…、嬉し…ぃ…です………」
何故か今日のアルベールはとても優しくて、シエルがアルベールの胸元にスリスリと頬擦りをすると、ふわふわと頭を撫でてくれた。
「シエル……」
「何…ですか?」
「太陽が見たいか?」
「い、いいの…?!」
アルベールの言葉に、シエルはガバッと顔を上げてキラキラと目を輝かせた。
アルベールはベッドに繋がれている鎖を手に持ち、「おいで」とシエルをベッドから降りさせた。
「ひゃあっ!」
約2週間、全くベッド上から動いていなかったシエルは、立ちくらみを起こしてフラついた。
アルベールは息を吐いてしゃがみこみ、シエルを横抱きにして部屋を出た。
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