58 / 266
第58話
アルベールは部屋を出て、扉に背を預けて息を吐いた。
シエルは奴隷だ。
他の奴隷と一緒の扱いをしなくては、他の兵や使用人に示しがつかない。
ただでさえ、アルベールが自分専用の性奴隷を作ったこと、そして、その奴隷を隔離しているということで噂が立っているのに、これ以上シエルに入れ込むのは駄目だと自分でも分かっている。
「アルベール様、ご夕食の準備が整いました。」
「あぁ。今行く」
使用人がアルベールの前で直角にお辞儀をし、用件を伝えてダイニングルームの方へ戻っていった。
ヴィクトリア家では昔から決まった家系から使用人を雇っており、アルベールが両親を殺してからも使用人を雇うことを続けていた。
ヒューマンオークションによる奴隷制度が出来てからは、働ける奴隷は数人買っている。
地下牢や汚物の掃除などだけその奴隷にやらせており、アルベールの身の回りのことは全て使用人が行なっていた。
この城にいる奴隷のほとんどは性奴隷で、兵や使用人にはその奴隷たちを好きに扱う許可を与えている。
兵や使用人の欲求を満たすのもまた主人の仕事だとアルベールは考えているためだ。
つまり、今までアルベールは自分のために奴隷を買うことも、使うこともなかったのだ。
それが突然こうもなれば、王宮の者は皆騒ぐに決まっていた。
ともだちにシェアしよう!