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第61話

「シエル様は幸せでらっしゃいますね…」 「え…?」 同じ奴隷である自分を羨ましそうに見つめる女に、シエルは目をキョトンとさせた。 「アルベール様は、シエル様をとても気にかけてらっしゃいます。大切にされておられるんだと見ていてわかります」 「で、でも僕、ずっと抱かれているだけだし…」 「私たちは名前も呼んでもらったことはないですし、ご飯だって与えてもらえない。与えられるのは城の兵士たちが持ってきた生ゴミだけ。全てを飲み込むまで、その地獄の時間は続くのです」 「え……?」 「奴隷がアルベール様に使われるなんて本当に稀で、普段はこの城の兵士や使用人に酷い行為を強いられているだけなんです。 ましてやアルベール様の性奴隷なんて、今までにいたことはありませんでした。 だから私、シエル様の食事係でも、アルベール様の命を受けられるだけで驚いたんですよ。」 今までアルベールが奴隷を使っているところをたくさん見てきたシエルには、その言葉が信じられなかった。 自分以外の奴隷が、兵士や使用人に使われているなど初めて知って、アルベール以外との接触のない自分の立場に驚いた。 アルベールは自分のことを、他の使用人たちには話していないのだろうか。 シエルは自分も見つかってしまったら、他の奴隷のように、ストレスの捌け口にされてしまうのではないかと体を震わせた。

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