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5章【苦痛と絶望】
アルベールが出陣した夜中、ノック無しにシエルの部屋の扉が開いた。
「アル様………?」
この部屋に入る際にノックをしないのはアルベールだけだ。
月明かりしか頼りのないシエルは、顔を布団から出して扉の方に目をやった。
しかし、近づいてくる足音は一人のものではない。
シエルはアルベールではないことに気づいて、もう一度布団に潜り込んだ。
必死に掴んでいた布団は、虚しくも簡単に剥ぎ取られてしまい、シエルの体を覆うものは何もなくなった。
「うわぁ!これが王が寵愛してる亡き国の王子?すっげぇ綺麗…。他の奴隷とは大違いだな」
「馬鹿。お前、この奴隷10億で競り落とされたんだぞ?そこらの奴隷とは別格に決まってんだろうが」
「本当に綺麗な瞳だなぁ。可愛い顔をしているし、肌のキメも細かい。モノは付いてるけどこの子はいけるね」
シエルの前に現れたのは三人の兵士だった。
恐らく城を警備するために残された者だろう。
しかし、この兵士たちはシエルがアルベールの物だと分かりながら手を出そうとしている。
シエルは自分の身に迫る危険を察知して、隙を見てベッドから降りた。
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