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第75話
遠征四日目の晩、
ペリグレットは見事戦争に勝利して、領土を広げて帰還した。
部屋の扉が開き、シエルはぼぅっと扉の方に視線をやった。
カツンカツンと響く足音も、美しくスッと伸びた背筋も、そして、暗闇の中でもギラリと光る眼光も。
(あぁ、アルベールだ。)
シエルは早くその体に触れたくて、そろそろと腕を伸ばした。
アルベールがベッドの縁に腰掛けてすぐに、シエルはアルベールの腰にギュッと抱きついた。
「アル様っ………!!」
奴隷のくせに、と押しのけられてもいい。
汚い、近づくなと罵られても構わないから、今だけはアルベールの温もりで安心したい。
そう思って、シエルは手を離さなかった。
目から溢れるシエルの涙が、アルベールの服に染みを作って消えていく。
「どうした、シエル」
たった四日間城を開けただけで、ここまで弱るものなのか?
少し不思議に思ったアルベールはシエルに理由を聞いたが、シエルは頑なに首を振り、無言を貫いた。
「シエル、答えろ」
アルベールはシエルの顎を掴み、無理矢理目を合わせた。
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