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第76話
本当は言いたい。
貴方以外に体を許してしまったと。
貴方以外の愛撫に感じてしまったと。
そして助けてほしい。
こんな汚らわしい自分を許して欲しい。
シエルは震える唇を噛んで、アルベールを見上げながら答えた。
「アル様がいなくて……、寂しかったです」
本当は嘘なんて付きたくないのに、真実を知ったアルベールに嫌われるのが怖くて、シエルは本当のことは何も言い出せなかった。
シエルはこの三日間の汚い記憶を消したくて、そろそろと脚を開いた。
「アル様っ………、挿れてください……」
シエルは自分で恥部を晒しながら、アルベールに懇願した。
しかし、アルベールはベッドから立ち上がり、扉の方へ歩いてこう言ったのだ。
「今回の遠征でもう一つ落とせそうな国があった。あと三日は帰らないから、今まで通りここで待っていろ」
どんどん遠くなる背中を見ながら、シエルはまた来るであろう悪夢のような未来に絶望した。
無意識にシエルの涙が頬を伝った瞬間、アルベールは振り向いて冷たい声で言葉を放った。
「何度も言うが、俺以外に抱かれるのは許さないからな」
次の日の朝、アルベールはたくさんの兵を連れて、再び遠征に出て行ってしまった。
シエルは眠れないまま、ずっと窓のそばで門を眺め、アルベールが出陣するのを見つめていた。
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