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6章【依存の先に】
シエルが目を覚ますとそこはいつも通りの部屋、綺麗なベッド、そして、空から差す陽の光。
あの死にたくなるような夜が、嘘だったかと思うような光景だった。
ただ手首に残る痣や、少しヒリヒリと痛む臀部が嘘でないことを物語っているようで、シエルはぽたりと涙を流した。
「シエル」
「アル様っ?!」
遠征に行くと言って、昨日の朝出ていったはずのアルベールが部屋に入ってきたことに、シエルは驚き、背を正した。
アルベールは枕元に腰を下ろし、シエルの頬を親指で撫でながら、ニコリと笑みを浮かべた。
シエルは五日以上、アルベールと体を交えていなかった。
「アル様………」
無意識に欲情を秘めた瞳でアルベールを見つめ、スルリと体を擦り寄せた。
すると、アルベールはポケットから小瓶を出し、シエルの前にちらつかせた。
「これ、何かわかるな?」
「そ、それは………」
「俺以外に体を許すなと教えたはずだが」
「きゃっ!!ぁぅっ!!」
アルベールはシエルの首を抑え、小瓶の中身をシエルの口の中へ注ぎ込んだ。
「このど淫乱が。誰にでも尻振りやがって」
「ち、ちが…っ!!アル様っ!!!」
「日が沈む頃にまた来てやる。じゃあな」
アルベールはそれ以上シエルに触れることなく、部屋を出ていった。
シエルはどんどん熱を帯びていく体に、莫大な不安を抱きながら夕刻を待った。
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