79 / 266

6章【依存の先に】

シエルが目を覚ますとそこはいつも通りの部屋、綺麗なベッド、そして、空から差す陽の光。 あの死にたくなるような夜が、嘘だったかと思うような光景だった。 ただ手首に残る痣や、少しヒリヒリと痛む臀部が嘘でないことを物語っているようで、シエルはぽたりと涙を流した。 「シエル」 「アル様っ?!」 遠征に行くと言って、昨日の朝出ていったはずのアルベールが部屋に入ってきたことに、シエルは驚き、背を正した。 アルベールは枕元に腰を下ろし、シエルの頬を親指で撫でながら、ニコリと笑みを浮かべた。 シエルは五日以上、アルベールと体を交えていなかった。 「アル様………」 無意識に欲情を秘めた瞳でアルベールを見つめ、スルリと体を擦り寄せた。 すると、アルベールはポケットから小瓶を出し、シエルの前にちらつかせた。 「これ、何かわかるな?」 「そ、それは………」 「俺以外に体を許すなと教えたはずだが」 「きゃっ!!ぁぅっ!!」 アルベールはシエルの首を抑え、小瓶の中身をシエルの口の中へ注ぎ込んだ。 「このど淫乱が。誰にでも尻振りやがって」 「ち、ちが…っ!!アル様っ!!!」 「日が沈む頃にまた来てやる。じゃあな」 アルベールはそれ以上シエルに触れることなく、部屋を出ていった。 シエルはどんどん熱を帯びていく体に、莫大な不安を抱きながら夕刻を待った。

ともだちにシェアしよう!