86 / 266

第86話

アルベールが応接室に入ると、エルヴィドは紅茶を飲み、足を組んでソファに腰掛けていた。 タレ目で左目の下には泣き黒子、ブロンドのウェーブヘアーにゴールドの瞳。 世間ではイケメン王子として名を馳せている彼は、アルベールからすると、干渉しないことを約束している男なだけだ。 どちらかというと、あまり好きではないタイプで、早く終わらせようと話を切り出した。 「今日は何の用だ」 「前から言ってるでしょ?同盟の話、白紙にしない?」 「何故?隣国と敵関係にあれば、他の国に攻めていけないだろうと組んだ同盟だ。同盟を切ったら互いに不利益にしかならないだろ」 「そうかなぁ?俺にはメリットしか感じないけどね〜」 エルヴィドは机に置かれた紅茶と茶菓子を口にしながら、首を傾げた。 「俺はペリグレットを落として、シエル=ランベリク、彼を手に入れたいんだよね。 おまけに、彼以外にもペリグレットにはたくさんの魅力がある。 この同盟関係中に広げた領土、大したものだよね。それ全部もらえるって考えたら、メリットしかないと思わない?」 やはり、エルヴィドの狙いはシエルだったようだ。 彼にとってあの澄んだ瞳、そして、美しい容姿に透き通るような声。 それはそれは、かなり欲しいものなのだろう。

ともだちにシェアしよう!