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第86話
アルベールが応接室に入ると、エルヴィドは紅茶を飲み、足を組んでソファに腰掛けていた。
タレ目で左目の下には泣き黒子、ブロンドのウェーブヘアーにゴールドの瞳。
世間ではイケメン王子として名を馳せている彼は、アルベールからすると、干渉しないことを約束している男なだけだ。
どちらかというと、あまり好きではないタイプで、早く終わらせようと話を切り出した。
「今日は何の用だ」
「前から言ってるでしょ?同盟の話、白紙にしない?」
「何故?隣国と敵関係にあれば、他の国に攻めていけないだろうと組んだ同盟だ。同盟を切ったら互いに不利益にしかならないだろ」
「そうかなぁ?俺にはメリットしか感じないけどね〜」
エルヴィドは机に置かれた紅茶と茶菓子を口にしながら、首を傾げた。
「俺はペリグレットを落として、シエル=ランベリク、彼を手に入れたいんだよね。
おまけに、彼以外にもペリグレットにはたくさんの魅力がある。
この同盟関係中に広げた領土、大したものだよね。それ全部もらえるって考えたら、メリットしかないと思わない?」
やはり、エルヴィドの狙いはシエルだったようだ。
彼にとってあの澄んだ瞳、そして、美しい容姿に透き通るような声。
それはそれは、かなり欲しいものなのだろう。
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