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第90話

「ごめん。良すぎてすぐにイッちゃった」 「あ…、あなたは誰なんですか…っ?!」 「俺は、エルヴィド=クライトマン。 君のこと助けにきたんだよ、シエル=ランベリク」 「助……けに………?」 怯えるシエルに、エルヴィドは両手を上げて何もしないことを意思表示し、ベッドの端に腰をかけた。 ニコニコと笑い、柔らかい口調で話すエルヴィドを見て、シエルはもしかしたら悪い人ではないのかもと、ほんの少しだけ緊張感を緩めた。 「そう。君はさ、ヴィクトリアに国を滅ぼされたでしょ?なのにその当主の奴隷だなんて、酷すぎると思わない?俺なら絶対死んでやるね」 「………」 エルヴィドの言葉に、シエルは口を閉ざした。 この短期間で随分従順に育てられているんだなと、エルヴィドは感心して、もう一言付け加えた。 「俺と手を組まない?」 エルヴィドはシエルに提案を持ちかけるが、シエルは薬の禁断症状が出始め、ガシガシと爪を噛んだ。 「何してるの?せっかく綺麗な爪なのに」 「……お薬……っ……、欲し…………」 「え?」 「お薬欲しいっ……です………」 もう我慢の限界なのだろう。 シエルの体は小刻みにカタカタと震え、イライラするのか爪をかじったり、肌を掻きむしったりと異常な行動を始めた。

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