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第91話
「は?え、どういうこと?
シエル、君は薬を使われてるの?」
「お薬ッ……」
「答えろ!!こんなになってしまうくらい飲まされてたのか?!」
「ひっ………!!ごめ…、ごめ…なさ……」
シエルは歯を鳴らして怯え始めた。
たしかに、この部屋に入った時から、明らかに様子がおかしい。
異常にアルベールを欲していたのは、従順に調教されたわけじゃなく、媚薬を使われているから?
エルヴィドは怯えるシエルを見て、何か助けてやれる方法はないかと思案した。
そろそろ応接室に戻らないと、アルベールにバレてしまうだろう。
しかし、こんな状態のシエルを放っておけるわけもなく、エルヴィドはベッドに置いてある毛布でシエルを包み、短刀を見せた。
「シエル。俺は媚薬の場所は知らないし、君に薬をやることはできない。けどね、シエル。俺はこんな美しい君を薬漬けにしたヴィクトリアが許せない。絶対に迎えに来るから、次にヴィクトリアが来たらこれで奴を刺すんだ」
「い、嫌…っ!」
「憎んでいるだろう?君があいつを殺さなくても、いつか俺が殺して君を迎えに来る。約束するから」
エルヴィドは短刀をシエルの手に握らせ、足早に部屋を出ていった。
シエルは自分の手の中にある短刀を見つめ、震えながら枕の下に隠し置いた。
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