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第92話
アルベールはミリィとエルヴィド双方を言いくるめ、やっとの思いで帰国させた。
頭と気力を使ったため、大きなため息を吐いた。
そろそろシエルが起きているかもしれない。
さすがに禁断症状が出るほど依存していて、9時間以上薬を摂取していない状況だと不味いなと、シエルの部屋へ向かった。
扉を開けると、シエルは毛布を被りながら震えていた。
アルベールが近づくと、ビクッと体を跳ねさせて後退した。
「あ………、アル様……………」
「辛いだろ。抱いてやるからこっちに来い」
「ダメ……!近づかないで…っ!!!」
目に薄く涙の膜を張って怯えるシエルを見て、アルベールは腹を立てた。
ただでさえ、先程の二人で相当なストレスが溜まっているのだ。
アルベールはシエルを組み敷き、首筋に噛み付いた。
「やっ!やだぁっ……!アルッ!アル、やっ!やめて!」
「煩い」
「あ、ああぁあああ!!!!」
グチュリ………
肉が抉れる様な音と、突如全身を駆け巡る痛みに、アルベールは下を向いた。
アルベールの腹部には短刀が刺さり、ドクドクと血が溢れ出している。
「……………シ……エル………?」
「あ、あぁ……。アル……、アル様……っ。やだ……、ごめ…なさぃ……。あ、僕………、ぼ……くが……」
シエルはボロボロと涙を流し、アルベールの手を握った。
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