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第93話

アルベールは口から血を吐き、床に横たわった。 シエルはどうすればいいのか分からず、その場で狼狽えていると、廊下から使用人の大きな声が聞こえた。 それと同時に、部屋の扉が大きく開いた。 「シエル、よくやったね」 エルヴィドはにこりと笑いながら、ベッドへ近づき、床に転がるアルベールを蹴り飛ばした。 「ガハッ……!!」 「随分間抜けな姿だね、ヴィクトリア。 どう?お気に入りの飼い犬に噛み付かれた気分は」 「クライト…マン……、てめ…ぇ………」 エルヴィドは食いかかって来ようとするアルベールの腹部に、爪先で思い切り蹴りを入れた。 痛みのあまり気を失ったアルベールのポケットから鍵を取り出し、シエルの手足に付けられた枷を外した。 「シエル、俺の城においで。優しくしてあげる」 「や…、やだ!!アル様っ!!!」 血だらけのアルベールを残したまま、エルヴィドはシエルを攫って自国へ帰還した。

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