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7章【隣の国の王子様】

シエルが目を覚ますと、そこはふかふかのベッドの上だった。 ご丁寧に、シルク素材のネグリジェまで着せられている。 部屋は白を基調としたヨーロピアン調の家具や壁紙でまとめられていて、かつて自分が住んでいた部屋と似ていることに懐かしさを覚えた。 「シエル、起きたの?ごめんね。うなされていたから、さっき医者に診てもらって、少しの間落ち着くように注射してもらったんだ」 扉を開けて入ってきたのは、優しい口調で話すエルヴィドだった。 「アル様は……?」 恐る恐るシエルが口を開くと、エルヴィドは少し不満そうな表情で答えを返した。 「ヴィクトリアなら、あのまま置いてきたよ。俺は君を助け出すのが目的だったからね。使用人が医者にでも連絡して、助かってるんじゃない?」 「よ……かった………」 「シエルは変わってるね。あんな酷い仕打ちを受けて、どうしてそんな心配してるの?寧ろあのまま死ねばいいって思わない?」 エルヴィドはソファに腰掛けて、シエルを穴が開くほどに見つめた。

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