94 / 266
7章【隣の国の王子様】
シエルが目を覚ますと、そこはふかふかのベッドの上だった。
ご丁寧に、シルク素材のネグリジェまで着せられている。
部屋は白を基調としたヨーロピアン調の家具や壁紙でまとめられていて、かつて自分が住んでいた部屋と似ていることに懐かしさを覚えた。
「シエル、起きたの?ごめんね。うなされていたから、さっき医者に診てもらって、少しの間落ち着くように注射してもらったんだ」
扉を開けて入ってきたのは、優しい口調で話すエルヴィドだった。
「アル様は……?」
恐る恐るシエルが口を開くと、エルヴィドは少し不満そうな表情で答えを返した。
「ヴィクトリアなら、あのまま置いてきたよ。俺は君を助け出すのが目的だったからね。使用人が医者にでも連絡して、助かってるんじゃない?」
「よ……かった………」
「シエルは変わってるね。あんな酷い仕打ちを受けて、どうしてそんな心配してるの?寧ろあのまま死ねばいいって思わない?」
エルヴィドはソファに腰掛けて、シエルを穴が開くほどに見つめた。
ともだちにシェアしよう!