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第95話
「な…に……?」
「いや、本当に綺麗だなって」
「………目?」
「全部。そのキラキラしてる大きな瞳も、サラサラで上質な髪も、透き通るような声も、華奢な体つきも、全てが綺麗だ」
シエルはそんな直接的に褒められたのは記憶上初めてで、恥ずかしくなり、エルヴィドから目を逸らして顔を赤らめた。
そして、話題を変えようと、自分から話を切り出した。
「ここ、僕の家みたい……」
「君の?
…ってことは、ランベリクが所有してた城ってことかな?」
「うん。母様がヨーロピアン調の家具が好きだったから……」
「そうなんだ。君を生んだ女性なら、さぞ美しい人だったんだろうね。噂には聞いていたけど、会ったことはなかったな」
「母様に会いたいな…」
「俺も可能なら、是非一度お会いしてみたいよ。そういえば父さんが、君の母親の写真を持っていた。君に渡しておくよ」
エルヴィドは泣きそうなシエルの感情を察したのか、そっとベッドサイドに写真を置いて部屋を出て行った。
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