105 / 266

第105話

「唇はダメッ……!!」 「え、なんで?」 「初めての…、キ、キスはアル様に捧げるって決めてるから!」 顔を赤らめながら俯き、ごにょごにょと小声で話すシエルに、エルヴィドはブハッと吹き出した。 「あははっ!シエルは本当に可愛いね。夢見る女の子みたいだ。ヴィクトリアと、キスしたことないんだ?」 「き……キスっていうか……、唇が…触れたことはあるけど……っ」 「ん?それってキスじゃないの?」 「僕が死なないように、水を飲ませてくれただけだから…。口移しはキスに含まれないでしょ?」 まだ思い人とのキスをしたことがない、と悲しそうな顔で話すシエルに、キスすることなんてできなかった。 エルヴィドはキス近づけていた顔を離し、シエルを優しく抱きしめた。 「妬けるなぁ…」 「え?」 「何でもない。仕方ないから唇は諦めてあげる。でも、今日もセックスは付き合ってね」 「うん…。エルの好きにしていいよ……」 シエルが力を緩めると、エルヴィドは慣れた手つきでシエルの服を脱がせた。 ベッドサイドのルームライトを消して、二人は今日もまた濃密な一夜を過ごした。

ともだちにシェアしよう!