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第109話

それでもアルベールが欲しいのは、 シエルただ一人なのだ。 ずっと求め続けていた物がやっと手に入ったのに、それはあっさりと自分の手の内から消えてしまった。 大きな喪失感がアルベールを襲う。 「ん………。アル、もう起きたの?」 ミリィは自身の裸体を隠すこともなく、上肢を上げて、アルベールに体を擦り寄せて、キスをした。 「ん……んふ………チュク………ぁ……ん…っ………」 二人の舌使いはどんどん荒いものになり、互いの唾液がトロッとシーツに滴り落ちる。 ミリィはアルベールの首に手を回し、唇が離れないように何度も何度も吸い付いていた。 「もうやめだ。俺は用がある」 「えぇ〜、もう終わり?じゃあ、また夜にここで待ってるからね?」 ミリィは名残惜しそうにアルベールから手を離し、部屋の扉が閉まるまで見送った。 「シエル=ランベリク、ね……。 貴方のために消してあげるわ…。待っててね、アルベール」 黒い笑みを浮かべたミリィは、脱ぎ捨てていた服を掻き集めて、エルヴィドの城があるティエンヌへと足を運んだ。

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