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第111話

エルヴィドがいなくなり、部屋に静けさが広がる。 中庭に面した大きなガラス戸からは、たっぷりと太陽の光が降り注ぎ、シエルはそちらに目を向けた。 中庭には小鳥やリス、野うさぎなどの小動物が気持ちよさそうに眠っていた。 シエルは癒される風景に微笑んで、中庭へと続く扉に手をかけた。 シエルが庭に出ると、動物たちは逃げるどころか、嬉しそうに寄ってきた。 「わぁ〜!可愛い……! 僕、ここに座ってもいい?」 シエルがそう聞くと、動物たちはシエルのために、ふわふわの綿をたくさん芝の上に集めた。 シエルは「ありがとう」とお礼を言って、その上に腰を下ろし、目を瞑って楽しそうに歌い始めた。 澄んだ高音のシエルの歌声に合わせ、小鳥たちも歌い、うさぎやリスは楽しそうに踊った。 しかし、楽しそうにシエルの周りを回っていた動物たちは、突然ビクッと震えて逃げ出した。 何事かと思いシエルが顔を上げると、そこには愛らしくて美しい、一人の女が立っていた。 女の瞳は明らかに憎悪を含んでおり、シエルは何とも言えぬ不安に困惑した。 「綺麗な歌声なのね、シエル=ランベリク」 「あ……、あなたは誰ですか………?」 シエルが震えた声で尋ねると、女はクスクスと笑いながら、シエルの前にしゃがみこんだ。

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